2022年の米国における最大の政治イベントは、11月8日に行われる中間選挙である。選挙まで1カ月を切る中、連邦下院は野党共和党優位との見方が強い一方、上院では与党民主党と共和党が激しく競り合う状況となっている。
下院では共和党優勢
今回の中間選挙では、上院(任期6年、定数100)の約3分の1に当たる35議席と、下院(任期2年、定数435)の全議席、36州の知事選などが争われる。政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が今月5日に掲載した予想獲得議席は、上院で民主46、共和47と競り合う一方、下院は民主182に対し共和が219で優勢だ
中間選挙は現政権の「信任投票」として与党に厳しい審判が下ることが多く、トランプ前政権時に行われた18年は、当時与党だった共和党が下院の過半数を失った。民主党は今回、歴史的インフレという強烈な逆風に見舞われ、共和党は「インフレ・治安悪化・不法移民増」の3点セットで攻勢をかけている。
民主党では左派グループの影響力増大による党内対立が顕在化し、バイデン政権の足かせとなっている。大型歳出法案「ビルド・バック・ベター(より良い再建)」は党内対立の影響で規模や項目を削った「インフレ低減法案」に姿を変え、バイデン大統領の政策実行力に疑問符が付いた。
多様性を尊重するバイデン政権下では、LGBT(性的少数者)の権利拡大をめぐって、体は男でも心は女だというトランスジェンダーに女性スペースの使用を認めようとする動きに懸念が広がっている。無党派層は穏健・中立を逸脱する民主党に疑問符を付ける傾向が強い。バイデン氏の支持率は50%を下回り、低迷が続いている。
一方、バイデン氏は9月の遊説で「MAGA(マガ)は米国の脅威だ」と述べ、トランプ前大統領や同氏の支持者への対決姿勢を鮮明にした。MAGAはトランプ氏が掲げたスローガン「メーク・アメリカ・グレート・アゲイン(米国を再び偉大に)」の頭文字だ。
トランプ氏は、昨年1月6日の連邦議会占拠事件で支持者らを扇動したとして、民主党主導の下院特別調査委員会で追及を受けている。今年8月には大統領退任時に機密文書を持ち出した疑惑で、フロリダ州の自宅が連邦捜査局(FBI)の捜索を受けた。
それでも、トランプ氏にはマガ共和党員を核とする党員の強力な支持があり、求心力が揺らぐ事態には発展していない。ただ20年大統領選でのバイデン氏勝利を認めないなどの過激な主張が、穏健な有権者を遠ざけている面もある。トランプ氏の支持者が離れれば共和党の上院選勝利は遠のくため、いかに有権者を取り込んでいくかが課題だ。トランプ氏は中間選挙後に24年大統領選への出馬を正式表明するとの見方も出ている。
政権運営が一層困難に
いずれにせよ、現在のところ民主党が下院で少数派に転落するのは確実とされている。バイデン氏の残り2年の任期の政権運営はこれまで以上に難しくなるとみていい。