国連安全保障理事会は、北朝鮮が日本上空を通過する弾道ミサイルを発射したことを受けて緊急会合を開いた。米欧は北朝鮮非難の報道機関向け声明の取りまとめを目指したが、中露が同意しなかった。
北朝鮮の弾道ミサイル発射は安保理決議違反である。安保理常任理事国の中露が、北朝鮮を擁護するのは無責任極まる。
挑発許す常任理事国
安保理は5月、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した北朝鮮に対する制裁を強化するため、米国主導で決議案を採決に付した。その際も13理事国が賛成したが、中露が拒否権を行使し廃案に追い込んでいる。
米欧は今回、安保理として一致した意思を示すことを優先したが、中露の同意を得ることはできなかった。こうした中露の姿勢について、米国の国連大使は「二つの常任理事国」が北朝鮮の金正恩総書記の挑発行為を許していると批判。一方、中露はミサイル発射が「米国主導の軍事活動の結果であることは明らか」などと北朝鮮の主張と同様の理由で米国を非難した。
北朝鮮は9月、核兵器使用に関する法令を定め、核先制攻撃も辞さない構えを強めている。正恩氏は最高人民会議(国会に相当)での演説で、米国の核戦力を牽制(けんいん)するために「絶対に核を放棄できない」と強調した。日米韓の共同訓練は北朝鮮の脅威増大に対処するためのものであり、中露の批判は的外れだ。
安保理は、北朝鮮による2006年10月の最初の核実験以降、計6回の核実験と度重なる弾道ミサイル発射に対し、17年12月までに10本の制裁決議を全会一致で採択した。しかし最近は、中露による北朝鮮擁護の姿勢が目立つ。
今回の会合でも、中露は「安保理の議論は(緊張を)激化させるものであってはならない」と主張。制裁は解決策にならないとして、逆に緩和を訴えた。緩和すれば北朝鮮が増長するのは目に見えている。中露の主張は地域の安定を揺るがしかねず、到底容認できない。
北朝鮮は会合と同じ時間帯に短距離弾道ミサイル2発を発射した。北朝鮮の肩を持つ中露に歩調を合わせた形だ。中露朝の結び付きは看過できない。
一方、先月下旬に日本海で米韓合同演習や日米韓共同訓練に参加した米原子力空母「ロナルド・レーガン」を中核とする空母打撃群は、北朝鮮による日本上空通過の弾道ミサイル発射を受け、日本海に再展開して韓国海軍と合同演習を行った。米空母打撃群には北朝鮮軍に壊滅的な打撃を与える攻撃力があるとされ、牽制効果は大きい。
北朝鮮では米空母が近海に展開するたびに全軍が警戒態勢に入るため、兵士らが相当疲弊するとの指摘もある。北朝鮮の挑発を抑止する上で米国と日韓との連携強化は重要である。
韓国は懸案への善処を
岸田文雄首相と韓国の尹錫悦大統領は電話会談で、北朝鮮による度重なる弾道ミサイル発射を「国際社会への明白、深刻な挑戦」と非難し、連携して対応する方針で一致した。日韓が連携を深めるには、元徴用工問題など両国間の懸案で韓国側の善処が求められる。