プロ野球ヤクルトの村上宗隆選手が、偉業を成し遂げた。今季最終戦でシーズン56本の日本選手最多本塁打を達成。同時に打率、打点でも首位となり、史上最年少の三冠王に輝いた。
日本人最多の56本塁打
王貞治さん(巨人)が昭和39年に達成した55本は、選手たちにとっては大きな目標であり、壁でもあった。巨人や米大リーグ・ヤンキースなどで活躍した松井秀喜さんが「55」の背番号をつけたのと同じく、村上選手も王さんの記録を超えることを期待されて55番を背負った。
しかし、55という数字の重圧は大きかったようだ。開幕以来コンスタントに本塁打を放ち続け、8月2日には史上初の5打席連続本塁打を達成した村上選手も、9月13日の55号以降、60打席本塁打が出なかった。
そんな中で、シーズン最終戦の最後の打席で「王超え」を成し遂げた。やはり実力とメンタルの強さによるものだろう。多くのスター選手がそうであったように、劇的な場面を実現してしまう何かを持っている。
三冠王達成も平成16年の松中信彦選手(ダイエー=現ソフトバンク)以来、18年ぶり8人目の快挙だ。22歳での達成は、昭和57年の落合博満選手(ロッテ)の28歳の最年少記録を塗り替えた。シーズン開幕前に「全てのタイトルを取れるなら取りたい」と貪欲に抱負を語っていたが、あっぱれというしかない。
入団4年目の昨年、39本で本塁打王となり、リーグ優勝と日本シリーズ制覇に貢献した。今年は主砲としての自覚を強め、チームをリーグ連覇に導いた。
村上選手の強みは左右に打ち分ける広角打法であり、それを本塁打にする技術とパワーである。さまざまなコースや球種への対応力も磨いてきた。成長の著しさに球界関係者は嬉(うれ)しい驚きの声を上げているが、練習と研究のたまものと思われる。
偉業達成について村上選手は「王さんや先輩たちは、もっとすごい偉業を成し遂げている。僕も、もっと長いシーズン、こういう成績を残せるように頑張りたい」と語っている。今シーズンのような記録をこれからも継続的に達成してこそ、プロ野球のレジェンドとなりうることをよく認識しての言葉である。目標を高く持って、これまで以上に研鑽(けんさん)を積んでほしい。
まず来シーズンに望みたいのは、平成25年にバレンティン選手(ヤクルト)が達成した本塁打記録の60本超えだ。少なくない球界関係者が村上選手であれば可能だと言っている。ぜひチャレンジしてほしい。大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手のように、これまでの規格を超えた日本人選手が生まれている。
今季は佐々木朗希投手(ロッテ)が28年ぶりで完全試合を成し遂げるなど、若手選手の活躍が目立った。野球はチームプレーだが、選手個人のプレーが輝かなければ面白くないし、元気も勇気ももらえない。憧れ目指す目標があってこそ、子供たちも頑張れる。だからスターが必要なのだ。
ポストシーズンも楽しみ
村上選手が、日本シリーズ進出を懸けたクライマックスシリーズという大舞台でどんな活躍を見せるか楽しみにしたい。