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【社説】重要土地等調査法 安保強化へ区域指定急げ

安全保障上重要な土地の利用を規制する「重要土地等調査法」が全面施行された。外国資本による重要施設周辺の土地取得に歯止めをかけるものであり、安全保障の強化につなげるべきだ。

外国資本が不透明な購入

昨年6月に成立した重要土地等調査法は、自衛隊や在日米軍、海上保安庁の施設、発電用原子炉施設、再処理施設などを「重要施設」と規定。首相はその周辺約1㌔の範囲などを「注視区域」、司令部機能などを有する重要施設周辺を「特別注視区域」に指定する。

指定された区域では、国が土地・建物の所有者らを対象に氏名や国籍、利用状況などを調査できる。特別注視区域での一定面積以上の土地・建物の売買については、氏名や国籍、利用目的などを事前に届け出ることを義務付けた。

農林水産省によると、昨年までの15年間で海外所在の延べ300以上の法人や個人が、23道府県の森林計約26平方㌔を取得。中国などの資本による不透明な土地購入の例もある。こうした土地はテロや犯罪の拠点となる恐れがあり、重要土地等調査法の全面施行は一定の歯止めとなるものだと言える。

政府は今月、重要土地等調査法の基本方針を決定し、規制対象の「阻害行為」として、自衛隊機の離着陸を妨げる工作物の設置や、施設への妨害電波の発射など7事例を示した。中止の勧告・命令に従わない時は、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方を科す。

一方、規制対象外の行為には、敷地内を見ることができる住居への移住や、私有地での集会開催など5事例を盛り込んだ。ただ、実際に勧告・命令を行うかは「首相が個別具体的な事情に応じ判断する」としている。不測の事態に備えるため、柔軟に判断できるようにしておくことは重要だ。

国会審議では自民、公明両党と日本維新の会、国民民主党が賛成した一方、立憲民主、共産両党は「私権制限」につながるとして反対した。だが国家と国民の安全を守るためであれば、土地利用をある程度規制することはやむを得ない。

政府は、第1弾の候補地を今年10月にも提示し、年内に指定する。2024年秋ごろまでに600カ所以上の指定を目指している。

領土や領海を守る国境離島も規制の対象となる。中国、北朝鮮、ロシアに囲まれた日本の安全保障環境が厳しさを増していることによるものだ。基本方針では、国境離島のうち私有地がある無人島は全域を特別注視区域に指定するとしている。有識者らで構成する審議会や地元自治体の意見を聴取する必要はあるが、できる限り区域指定を急ぐべきだ。

問題点の早急な改善を

ただ、重要土地等調査法には不十分な点もある。売買自体を防止することはできず、阻害行為が発生するまでは規制できないことだ。米国では安全保障対策として、大統領が重要施設周辺の不動産取引を禁じることもできる。問題点の早急な改善が求められる。

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