トップオピニオン社説【社説】尖閣防衛 台湾有事念頭に抑止力高めよ

【社説】尖閣防衛 台湾有事念頭に抑止力高めよ

日本政府が沖縄県・尖閣諸島を国有化してから10年が経過した。中国海警局による領海侵入が常態化し、尖閣をめぐる緊張が高まっている。日本は尖閣防衛策を強化すべきだ。

「第2海軍」の中国海警局

海警船は近年、尖閣周辺の接続水域を年間300日前後航行し、領海には約30~40日侵入している。今年7月には国有化以来最長の64時間17分にわたって領海内にとどまった。日本漁船の追尾といった危険な行動も増加している。

尖閣は日本固有の領土だ。日本は1895年に尖閣を編入した。一方、中国が領有権を主張するようになったのは、国連機関が東シナ海に石油埋蔵の可能性があると指摘した後の1970年代からである。領海侵入が許されないのはもちろん、尖閣周辺を頻繁に航行して緊張を高めることも断じて容認することはできない。

海警船の航行常態化の背景には、海上法執行機関である海警局の強化がある。2013年に国務院に設置された海警局は、18年に中央軍事委員会の指揮下にある人民武装警察部隊(武警)に編入された。最近も海軍のコルベット艦が海警局に移管されたと報じられるなど「第2海軍」化が進んでいる。

21年には武器使用について明記した海警法が施行された。海上保安庁法で「軍隊の機能」が否定され、武器使用も厳しく制限されている海保と著しく異なっている。それでも海上法執行機関の建前を維持する海警局に対し、平時でも有事でもない「グレーゾーン事態」での海保と海上自衛隊の対処力強化に向けた法整備が求められよう。

今年10月の中国共産党大会で3期目入りが確実視される習近平国家主席(党総書記)は強国実現を目標に掲げ、西太平洋地域の覇権確立を目指している。中国側の尖閣周辺での挑発は今後も強まるとみていい。

一方、習氏は尖閣に近い台湾の統一を「歴史的任務」と位置付けている。これまで習氏は自らの権威向上に努めてきたが、建国の父・毛沢東や、改革開放政策を進めた鄧小平に比べれば実績は乏しい。3期目入りを実現すれば、台湾問題で「進展」を図ろうとするとの予想も出ている。

「台湾有事は日本有事」だ。中国が台湾を侵攻すれば、尖閣諸島を含む先島諸島が攻撃を受けるとも指摘されている。ペロシ米下院議長の台湾訪問に反発し、中国が8月に台湾周辺で行った軍事演習では、中国軍の弾道ミサイル5発が日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。

尖閣をめぐっては、米国が対日防衛義務を定めた日米安全保障条約5条の適用対象になることを繰り返し確認している。しかし、米国頼みでは駄目だ。日本自身が尖閣を守り抜く決意を示し、具体的な抑止力向上策を講じなければ、米国との同盟もうまく機能しないだろう。

実効支配強化に努めよ

ロシアのウクライナ侵略が続く中、7月に中露両国の軍艦が尖閣周辺の接続水域を航行したことも気掛かりだ。

日本は尖閣に公務員を常駐させるなど、実効支配の強化に努めるべきだ。

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