【社説】自民の絶縁推進 看過できぬ内心の自由侵害

自民党が旧統一教会(世界平和統一家庭連合)および関連団体との関係について、党所属国会議員379人の点検結果を発表した。8項目の質問の一つでも該当すると答えた議員は179人で、そのうち選挙支援依頼などがあった121人の実名を公表し、今後は関係断絶を党内に徹底していくのだという。

スタッフが信者か確認

党総裁である岸田文雄首相の“絶縁”宣言に伴う措置だが、その渦中で既に憲法が保障する内心の自由(思想・良心の自由、信教の自由など)を侵害する事態が生じており、方針が地方議員や党員に拡大されればより深刻な事態を招来しかねない。深く憂慮される。

 首相は党所属国会議員に先駆けて、閣僚など政務三役人事でも当該団体との関係断絶を条件とした。安倍晋三元首相銃撃事件の容疑者が旧統一教会に恨みを抱いていたとの警察情報に触発されて教団への批判が沸き起こり、新型コロナウイルス感染や国葬批判の拡大なども加わって内閣支持率が下落する中、緊急避難的な対応だったはずだ。

だが、マスコミが閣僚らと教団などとの接点を次々に暴露する中で支持率はさらに下落。さらに党の調査が進む過程で、野党の標的となった山際大志郎経済再生担当相が、自らの秘書が教団の信者である可能性を指摘する「週刊新潮」の報道を受けて、事務所スタッフ全員に「当該宗教の信者」かどうか確認する事態にまで至った。

山際氏はこの確認に基づいて報道を否定し、「内心の自由を最大限尊重するのが非常に重要だが、社会情勢に鑑み、あえて質問した」と弁明した。だがこれは、社会情勢次第では個人の内心の自由は侵し得るという、憲法の大原則を軽視するとんでもない言動だ。江戸時代の宗門改めのようなことが起きているにもかかわらず、岸田首相は注意すらしておらず、野党にも大きく問題視する動きはない。

自民党は今後、教団などとの絶縁方針をガバナンスコードに盛り込み、地方議員や党員にも徹底していくという。さまざまな信仰や思想・信条を持つ人々が自由と民主主義を守るために結集した自民党にとって、根拠も曖昧な特定教団との絶縁は自殺行為に他ならない。マスコミが党員の信者疑惑を書き立てれば、党内でわが身を守るために宗門改めのようなことが行われても誰が止められるだろうか。

それだけではない。首相が行政機関の長として教団などとの絶縁を言明したことで、官僚がその意向を忖度(そんたく)し、配下の公務員の信仰点検を行って人事上の不利益を与えることまで起こり得る下地がつくられた。

あまりに拙速な断絶宣言

首相の決断は重く、責任が伴う。教団がさまざまな問題を指摘されているのは事実だが、その大部分は教団との裁判で脱会者の代理人となってきた弁護士団体やマスコミによるもので、政府は調査を始めたばかりだ。司法が教団の解散を認めたわけでもない。そんな段階で「社会的に問題が指摘される団体」という極めて曖昧な基準により、何の違法行為も認められない関連団体まで含め絶縁を宣言したのは、あまりにも拙速だった。

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