ロシアのウクライナ侵略開始から、きょうで半年となる。力による一方的な現状変更の試みは断じて容認できない。
きょうはウクライナの旧ソ連からの独立記念日でもある。日本をはじめとする民主主義陣営は、ウクライナが主権と領土を守り抜くことができるよう十分な支援を続けるべきだ。
NATO拡大許す結果に
ロシアはウクライナで民間人虐殺や原発攻撃など国際法違反の蛮行に及んでいる。民主主義諸国が結束し、ロシアに強力な制裁を科しているのは当然だ。
ただ、全てがロシアの狙い通りに進んでいるわけではない。ロシア軍は当初目標にしていた首都キーウの制圧に失敗。北部からの部隊撤退を余儀なくされた。4月には黒海艦隊の旗艦「モスクワ」をウクライナのミサイル攻撃で失った。バーンズ米中央情報局(CIA)長官によれば、侵略に伴うロシア軍の死者は約1万5000人に上る。
また侵略にはウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を阻止する狙いがあったが、危機感を抱いた北欧のフィンランドとスウェーデンが長年の中立政策を転換してNATO加盟を申請。結果的にNATO拡大を許すこととなった。侵略は戦略的には失敗と断じていい。
ロシアは7月にウクライナ東部ルガンスク州全域の制圧を宣言。現在は隣接するドネツク州の掌握を目指しているが、進軍ペースは大幅に落ちているもようだ。ただロシアのプーチン大統領は、中途半端な形で侵略をやめて国内で批判が高まることを恐れており、ウクライナ危機の長期化は避けられない。
2014年3月のウクライナ南部クリミア半島併合の際、ロシアは当時の主要8カ国(G8)から追放され、欧米などから制裁を科された。だが、その後も東部で「人民共和国」樹立を宣言した親露派と政府軍との戦闘に軍事介入するなど、ウクライナの主権を侵害し続けた。
こうした事態が今回の侵略の一因ともなっている。国際社会の危機感が薄れれば、中国の台湾侵攻を誘発するなど一層の情勢不安定化を招きかねない。
ウクライナのゼレンスキー大統領はロシア軍を2月の侵略開始前の状態まで撤退させれば勝利としていたが、最近はクリミア奪還にも意欲を示している。民主主義諸国はウクライナの勝利まで武器を含む十分な支援を行う必要がある。
日本が得るべき教訓は多い。1991年の旧ソ連崩壊後、ウクライナは世界3位の核兵器保有国だったが、94年の核拡散防止条約(NPT)加盟に際し、核兵器をロシアに移管した。ウクライナに核兵器があれば、ロシアの侵略はなかったとの指摘も出ている。
プーチン氏は核使用の威嚇を繰り返している。中国や北朝鮮の核の脅威も増大する中、日本は抑止力強化に向け、米国の核兵器を共同運用する「ニュークリア・シェアリング(核兵器の共有)」も検討すべきだ。
安保強化へ改憲急げ
安全保障強化のためには憲法改正も急ぐ必要がある。改憲を悲願とした安倍晋三元首相亡き後も、改憲への動きを活発化させなければならない。