【社説】五輪汚職 選手の努力踏みにじった不正

東京五輪・パラリンピックの大会スポンサー選定などをめぐって紳士服大手AOKIホールディングス側に便宜を図った見返りに計5100万円の賄賂を受領したとして、東京地検特捜部は受託収賄容疑で大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者、贈賄容疑で同社前会長の青木拡憲容疑者ら3人を逮捕した。

日本と世界に感動と勇気を与えた東京五輪を、個人の利益のために不正に利用したのであれば極めて悪質で容認できない。

 組織委元理事らを逮捕

電通出身の高橋容疑者はスポーツビジネスの第一人者で、2002年サッカーワールドカップ日韓大会の招致にも関わった。今回の事件では、青木容疑者らから大会スポンサーのオフィシャルサポーター契約や公式ライセンス商品の販売契約などで便宜を図ってほしいとの請託を受け、コンサルタント料名目で計5100万円の賄賂を受領した疑いが持たれている。

組織委とAOKIは「ビジネス&フォーマルウエア」分野でスポンサー契約を締結。AOKIは大会ロゴ入りスーツなどの公式ライセンス商品の販売権などを獲得した。高橋容疑者が青木容疑者らの意向を受けて組織委などに働き掛けたとの見方が強まっている。

不審な点は多い。オフィシャルサポーターの契約額は「15億円以上」との目安が設けられていたにもかかわらず、AOKIとは3分の1の5億円で契約していた。月100万円だったコンサル料が大会閉幕後の21年10月以降、月50万円に減額されたことも五輪との関連を示すものとみられている。

また、選手強化費としてAOKIから支払われた2億3000万円のうち、高橋容疑者は少なくとも1億6000万円を得たという。このような点について、特捜部は徹底解明を進めるべきだ。

東京五輪は新型コロナウイルスの感染拡大の中、多くの関係者の懸命な努力によって開催され、日本をはじめとする各国選手の活躍は世界の人たちにコロナ禍克服への希望を与えた。その裏でこうした汚職があったとすれば、選手や関係者の努力を踏みにじって五輪の輝きを失わせるものであり、到底許されるものではない。

組織委理事は大会特別措置法で「みなし公務員」と規定されており、一般の公務員と同様に職務に関して金品を受け取った場合は収賄罪に問われる。高橋容疑者の容疑が事実であれば、公共性の高い立場に立っていることの自覚に欠けた行為だと言わざるを得ない。

五輪を含むスポーツの国際大会では、過去にも金銭の絡む疑惑や汚職が発覚している。不正によって五輪に傷を付けることがあってはなるまい。スポーツ界は今こそ自浄作用を発輝しなければならない。

 札幌招致へ透明性確保を

日本では、札幌市が30年冬季五輪・パラリンピックの招致を目指している。

今回の事件が招致運動に悪影響を及ぼさないよう、札幌市や日本オリンピック委員会(JOC)などは透明性の確保に努め、信頼回復に全力を挙げる必要がある。

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