海上自衛隊と米韓両国の海軍がハワイ沖で弾道ミサイルの探知・追尾訓練を実施した。核・ミサイル開発を進める北朝鮮を念頭に、連携して対処する能力の向上を図ることが狙いだ。日米韓の防衛協力強化には、日韓関係の改善が欠かせない。
ミサイル発射繰り返す北
訓練は、日米韓3カ国とオーストラリア、カナダによるミサイル警戒演習「パシフィック・ドラゴン」の一環。弾道ミサイルの模擬弾を実際に発射し、迎撃の手順や情報共有の方法などを確認した。防衛省が日米韓共同訓練の実施を発表したのは2017年12月以来となる。
北朝鮮は今年に入り、大陸間弾道ミサイル(ICBM)級を含むミサイル発射を繰り返している。核実験の準備も終えたとみられている。
韓国の尹錫悦大統領は日本統治からの解放を記念する「光復節」の式典で、非核化を条件に「北朝鮮の経済と暮らしを画期的に改善できる大胆な構想」を提案。これに対し、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記の妹の与正党副部長は「国体」の核兵器と経済協力は交換できないと主張するなど強硬姿勢を貫いている。日米韓の防衛協力強化が急がれるのは当然だ。
ただ日韓の防衛協力をめぐっては、18年末の韓国軍艦艇による自衛隊機への火器管制レーダー照射が、依然として正常化の障害になっている。韓国軍は19年2月、自衛隊機が接近を繰り返した場合は同レーダーを照射する指針を作った。
文在寅前政権の反日姿勢によるものだと言える。尹政権は早急に指針を廃棄するとともに、作成の経緯を調査して日本側に明確な説明を行う必要がある。
今年6月にスペイン・マドリードで北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が開かれた際、日米韓は約5年ぶりの首脳会談を行い、3カ国の安全保障協力推進で一致した。これは北朝鮮はもちろん、台湾統一を目指す中国を念頭に置いたものだ。東アジアで自由と民主主義の価値観を共有する日韓が米国との連携を強化すれば、中国への牽制(けんせい)効果を高めることができよう。
尹政権は在韓米軍の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の正式配備を推進する方針だ。THAADが17年に配備された際、中国が自国への脅威になるとして韓国への経済報復措置を取ったため、文政権は暫定配備にとどめていた。正式配備は日米との防衛協力強化に資するに違いない。
日米韓が中朝両国に対抗する上で、日韓は安全保障分野だけでなく、全般的な関係改善を急ぐべきだ。日韓間の懸案となっている元徴用工訴訟について、尹氏は「日本が憂慮する主権問題に衝突することなく、債権者(原告)が補償を受けることのできる方策」を検討していると述べた。
問われる尹氏の指導力
国会で少数与党の尹政権は、支持率も低迷し、元徴用工問題を解決して日韓関係改善につなげられるか疑問視されている。
しかし日韓関係が冷却化したままでは、日米韓の連携に支障を来し、増大する中朝の脅威に対処することが難しくなる。尹氏の指導力が問われている。