【社説】4~6月期GDP コロナ前回復も楽観できず

2022年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質で前期比0・5%増、年率では2・2%増だった。実額は年率換算で542兆円となり、新型コロナウイルス感染拡大前の19年10~12月期(540兆円)の水準を回復した。

ただ、感染「第7波」や物価高、世界経済の減速など懸念材料が山積しており、景気の先行きは楽観できない。

個人消費が成長を牽引

4~6月期の日本経済は、緩やかながらも3四半期連続のプラス成長となった。コロナ対策の「まん延防止等重点措置」が3月下旬に解除され、GDPの半分以上を占める個人消費が前期比1・1%増と持ち直し、成長を牽引(けんいん)した。特にコロナ禍で抑制されていた旅行や飲食などのサービス消費が活発化した。

設備投資もデジタル化に向けたソフトウエア投資が伸び、1・4%増と成長の両輪となった。内需全体で0・5%分GDP押し上げに寄与した。

一方外需は、輸出が鉄鋼や非鉄金属が伸びて0・9%増、輸入も原油や天然ガスが増えて0・7%増だった。算定上、外需のGDP押し上げ効果はほぼゼロで、内需主導の経済になった。

この結果、4~6月期の実質GDP実額は年率換算で542兆円となり、政府が21年度中を目指していたコロナ前の水準に、米欧に周回遅れながら、ようやく到達した。

もっとも、山際大志郎経済財政担当相が指摘したように「まだ道半ば」である。ピークだった18年4~6月期の557兆円を依然下回っており、また先行きにも懸念材料が少なくないからである。

一つは感染「第7波」が、今回成長を牽引した個人消費の勢いを鈍らせないかである。既に飲食や旅行でキャンセルが増えてきており、気になるところである。極端に重症者が増えない限り、政府には引き続き行動制限などの規制策は取らず、収束を見据え、新型コロナの感染症法上の位置付けを季節性インフルエンザ並みの「5類」に移行するよう検討を進めてほしい。

加えて、物価高である。物価高で実質賃金が目減りする中、食料品など生活必需品の値上げが止まず、今後も続く見通しにある。家計ばかりでなく、企業にも物価高騰の影響は既に顕在化し、物価高騰を原因とした倒産件数が昨年を上回るペースで増加。企業物価指数は10%前後の高い伸びが続き、消費者物価もこのところ2%以上で推移している。

内需主導の経済成長を

政府はこのようなウクライナ危機の長期化や、一服したとはいえ円安の影響で進行する物価高に対し、10月以降の輸入小麦売り渡し価格の据え置きや、石油元売り会社への補助金の予算措置の延長などを検討し、来月上旬に追加対策を策定する。物価高の影響は国民に広く及んでいるだけに、家計に対しても「インフレ手当」など直接的な支援を検討すべきであろう。

米欧ではインフレの高進から利上げなどの景気抑制策が取られ、世界経済の減速懸念が一段と高まっている。米欧の状況を踏まえながら、内需主導の経済成長を持続させてほしい。

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