【社説】テロ国家指定検討 米国は対露圧力を強化せよ

ホワイトハウスで演説するバイデン米大統領=8月5日(UPI)

米国で、ウクライナを侵略したロシアのテロ支援国家指定を求める声が強まっている。

ロシアは民間人虐殺や原発攻撃など国際法違反の非人道的行為を繰り返している。判断権限を持つ国務省は慎重に検討しているが、ロシアへの圧力を強めるべきだ。

国務省は慎重姿勢崩さず

米国のテロ支援国家指定は、金融制裁のほか、武器輸出の禁止や経済援助の制限などが科される措置だ。現在、北朝鮮、イラン、シリア、キューバが指定されている。

ウクライナのゼレンスキー大統領は4月のバイデン米大統領との電話会談でロシアをテロ支援国家に指定するよう要請。米上院は7月、ブリンケン国務長官に指定を求めることを全会一致で決議していた。

ロシアによる侵略から今月24日で半年となる。この間、ウクライナの首都キーウ近郊ブチャなどで多くの民間人を虐殺したほか、欧州最大規模の南東部ザポロジエ原発を砲撃するなどの蛮行を繰り広げた。原子炉などが被弾すれば、史上最悪の汚染をもたらしたチェルノブイリ原発事故(1986年)を超える惨事となり、ウクライナだけでなくロシアを含む周辺諸国にも被害が及ぶだろう。

さらに、黒海沿岸の都市を封鎖し、ウクライナ産穀物の輸出を停滞させたことでアフリカ諸国を中心とする食料危機を招いた。輸出が再開したとはいえ、世界の食料安全保障に重大な悪影響を与えたことは容認できない。ロシア軍がウクライナから撤退するまで、米国をはじめとする国際社会は対露圧力を緩めることがあってはならない。

ただ、国務省はロシアのテロ支援国家指定に慎重な姿勢を崩していない。既存の制裁がロシア経済に打撃を与えており、指定の実効性は薄いとみているためだが、背景には国際秩序のさらなる混乱を招く事態への懸念がある。

しかし、ロシアの力による一方的な現状変更の試みには強い姿勢で臨む必要がある。ウクライナは主権と領土を守るため、懸命な戦いを続けている。軍事支援はもちろん、ロシアのテロ支援国家指定もウクライナにとって大きな力となるはずだ。

バイデン氏は、ロシアが侵略前にウクライナとの国境付近に10万人規模の軍部隊を集結させた際、ウクライナへの米軍派遣を否定する発言を繰り返した。これが侵略を誘発する一因となったことは否めない。

こうした発言は、今年11月の中間選挙を意識したものでもあろう。米国民は長年の海外での戦争に疲弊している。昨年8月にアフガニスタンからの米軍撤収を強行したのもそのためだ。ただ中間選挙では、高止まりするインフレなどの影響で与党民主党の下院での多数派維持は絶望視され、上院でも厳しい戦いが続いている。

バイデン政権は決断急げ

ペロシ米下院議長はブリンケン氏にロシアのテロ支援国家指定を要求し、政権が行動を起こさないのであれば議会が行動すると警告した。

バイデン政権は指定に向け、早急に決断を下さなければならない

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