日野自動車は排出ガスや燃費のデータ改竄(かいざん)をめぐって、不正行為が少なくとも2003年から行われていたことを明らかにした。
自動車大手では近年、データ改竄や不正検査などが相次いでいる。日野自は長年にわたる不正を猛省して再発防止を徹底すべきだ。
国交省に虚偽報告も
日野自は、第三者による特別調査委員会がまとめた報告書を公表。報告書では、燃費性能を実際よりも良く見せるために測定数値を改竄したり、エンジン性能を測る試験の一部を行っていなかったりした不正があったとしている。
日野自は今年3月、データの改竄を発表。その際は、不正が始まったのは「遅くとも16年9月」としていた。不正期間が延びたことで、改竄対象となったエンジンは4機種から26機種に拡大。これらエンジンを搭載した車両は最大で累計77万2000台に上る。
国土交通省は改竄されたエンジン4機種について、1951年の道路運送車両法施行後初めてとなる型式認証取り消しの行政処分を行った。型式認証は生産に必要なものだが、新たに不正が見つかったエンジンも取り消される可能性が高い。
出荷停止やリコールの対象も広がり、業績へのさらなる打撃は避けられまい。日野製エンジンを使用する自動車や建機メーカーでも出荷停止が相次いでおり、日野自は真摯(しんし)に対応する必要がある。
問題は不正だけではない。調査委は、国交省が要請した2016年の燃費試験調査に対し、日野自が不適切な事案はないと「虚偽の報告を行った」とも認定した。極めて悪質性が高く、信頼を失墜させるものだと言わざるを得ない。
調査委は、経営陣が「不正を認識していたとは認められなかった」と結論付けている、一方で不正の原因として、上意下達の気風が強過ぎて「上にものを言えない」「できないことをできないと言えない」という風通しの悪い組織となっていることを挙げた。こうした企業体質を改善できなければ、今後も同じことが繰り返されよう。経営陣は調査委の指摘を重く受け止め、責任の所在を明確にしなければならない。
親会社であるトヨタ自動車の豊田章男社長は、日野自の小木曽聡社長を通じて「すべてのステークホルダーの信頼を裏切るものであり、大変遺憾に思う」とのコメントを公表した。ただ01年の子会社化以降、トヨタは日野自に社長を送り込むなど経営に関与してきたのだから責任は免れない。日野自の組織改革と再発防止への取り組みに積極的に協力すべきだ。
検査方法の見直しを
三菱自動車やスズキなどの自動車大手でも近年、データの偽装や国のルールと異なる方法での計測が判明した。日産自動車やSUBARU(スバル)では、資格のない従業員による完成検査が発覚している。
このようなケースは言語道断だが、不正を見抜けない国交省の検査方法にも問題があるのではないか。不正根絶に向けて見直しを進めてほしい。