【社説】大谷選手の偉業/弛まぬ挑戦に勇気もらう

米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手が、昨年のア・リーグ最優秀選手(MVP)獲得に続く偉業を成し遂げた。「野球の神様」と呼ばれるベーブ・ルース以来、104年ぶりとなる「2桁勝利、2桁本塁打」を達成した。

投手と打者の「リアル二刀流」の夢を実現するだけでなく、弛まぬ挑戦を続ける姿勢には野球ファンであるか否かを問わず勇気を与えられる。

球速増したスライダー

昨シーズンは46本塁打を放ち、本塁打王競争が注目されたが、投の方は9勝(2敗)と、もう一歩のところで偉業に届かなかった。昨年は落差の大きなスプリットで次々に三振を奪ってきた。しかし、それに満足することなく、今年は横に大きく変化し、球速も増したスライダーを投球の軸にして勝利を積み重ねてきた。

目標に向かっての弛まぬ努力と自己変革の賜物だ。その姿は私たちも学ぶものが多い。

直近の3試合では、打線の援護が乏しく、偉業達成はお預けとなったが、全く腐るところがなかった。精一杯自分の仕事をし、責任を果たそうという姿勢が伝わってきた。その姿は清々しく、選手として人間としての成長を見ることができた。

日本ハム時代からその類まれな資質を注目されてきた大谷選手だが、ファンにとっては、その成長を一緒に体験できるような気にさせてくれるのが、ほかの選手にはない魅力といえる。

偉業達成について大谷選手は「単純に(投打の)二つやっている人がいなかっただけかなと」と謙遜しているが、今後、大谷選手に続こうという選手が出てくるに違いない。今回の偉業は大リーグそのものを変えるインパクトがある。

ルース以来の偉業を米国人ではない東洋人の日本人が成し遂げたことにも、小さくない意味があると思われる。スポーツと民族、人種の問題は基本的に関係ないが、やはりアジア人、日本人に対する一種の偏見を打破するものがあるのではないか。

野茂英雄選手から始まり、イチロー選手や松井秀喜選手ら日本人大リーガーが残したものは大きい。それは野茂選手の2度のノーヒットノーラン達成など成績だけではなく、プレーに現れる人間性にこそ素晴らしいものがあった。それら選手より世代が一回りも二回りも新しい大谷選手は、いまの日本の若者の強さと美しさを日米のプロ野球ファンに示してくれた。

ア・リーグとナ・リーグの優勝チームが王座を争う決定戦がワールドシリーズと言われるように、米大リーグで頂点に立つことは世界の頂点を意味する。かつての日本は、科学技術その他で世界のトップを目指すバイタリティーにあふれていた。しかし、近年は若い人たちの内向き志向が強くなっているのが残念だ。

「第2の大谷」を期待

一方で情報のグローバル化の中、いいものは一気に世界に広まるという時代であり、誰もが世界を舞台に挑戦できる時代でもある。

異なるさまざまな分野からも「第2の大谷」が生まれることを期待したい

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