【社説】岸田改造内閣 国難打破へ遅滞許されぬ

岸田文雄首相が内閣改造・党役員人事を行い、第2次岸田改造内閣が発足した。閣僚19人のうち14人を入れ替えて刷新イメージを出した一方、ベテランを起用することで安倍晋三元首相の死去により不安定になった政権を安定化させようとする思惑がにじみ出ている。

中国の軍事圧力が強まる中で国家の安全保障体制強化や新型コロナウイルスの拡大防止、経済再生などの緊急課題が山積している。国難打破へ遅滞は許されない。

有事の政策断行内閣

9月上旬の改造が予定されていたが、特定の宗教団体と政治家との関係などで逆風が吹き、前倒し人事をすることで事態を打開しようと決断した。岸田首相は記者会見で「数十年に一度の難局を突破する」ため、先の参議院選挙で得た信任を形にし、期待に応える有事の内閣を整えるため断行したとして「政策断行内閣」と命名した。

外相、財務相、官房長官と党の副総裁、幹事長の骨格を変えず、防衛相、厚生労働相、経済産業相などに即戦力となる経験者を起用した。スピード感を持って臨んでもらいたい。

首相が特に強調したのが、ポスト冷戦期の新秩序形成に力を尽くす点だ。ロシアのウクライナ侵攻や中国の台湾周辺での海空域における大規模軍事演習が続いている。4日には中国軍の発射した弾道ミサイル5発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。日本への攻撃を想定したものとみられている。

最近の日米などが参加する環太平洋合同演習「リムパック」では、密接な関係にある他国が攻撃を受けて日本の存立が脅かされる「存立危機事態」を想定した訓練を行った。安保関連法を効果的に運用すれば万全というわけにはいかない。有事にスムーズに対応できるよう憲法を改正することが不可欠である。

岸田首相は7月の参院選大勝後の記者会見で、改憲への「民意」が示されたとして「できる限り早く発議に至る取り組みを進めていく」との決意を表明した。有事の政権運営に緊張感を持って対応してもらいたい。

首相は「経済安全保障推進法を実行に移す」ことも強調した。米中対立激化の中で「軍事力を使わない戦争」に対処し、新たな国際秩序形成に積極的に参加していくためにも、経済安保を国家安全保障戦略の中に位置付けて取り組む必要がある。

この看板政策の担当相となる高市早苗氏は、経済安保策として第1に取り組むべきテーマに産業スパイ対策に資する法制度の整備、すなわちスパイ防止法の必要性を挙げたことがある。この議論も盛り上げたい。

人口減・少子化対策も待ったなしだ。首相は「対策を抜本的に強化する」と語ったが、来年からスタートするこども家庭庁が縦割りを排した行政を進めていくための司令塔として機能するのか。初入閣の若手閣僚の手腕が問われている。

 安倍氏の「志」継承を

岸田首相は「安倍元総理の思いを受け継ぎ、ご自身の手で果たすことができなかった難題に取り組んでいく」と強調した。安倍氏の「志」の継承を決して忘れてはならない。

spot_img
Google Translate »