ペロシ米下院議長が台湾を訪問し、蔡英文総統と会談した。
米国と台湾の公的交流を認めない中国が重ねて警告を発する中、ペロシ氏は米下院議長として25年ぶりとなる台湾訪問を果たした。日本も台湾との関係を法的に裏付けるなど一層の連携強化を進めるべきだ。
中国「断固反対」と猛反発
米大統領職の継承順位2位という要職の下院議長が、台湾を訪れた意義は極めて大きい。ペロシ氏は会談で「米国が台湾に対する関与を放棄することはない」と断言。米国と台湾の「永遠の友情」を明確にすることが訪台の目的だと語った。
中国本土と台湾は不可分とする「一つの中国」原則を掲げる中国は猛反発している。外務省は「断固反対で厳しく非難する」とする声明を発表。国防省も報道官談話で「非常に危険な行為で必ず重大な結果を引き起こす」と反発した。
中国軍はきょうから7日まで台湾を取り囲む6カ所の海空域で軍事演習や実弾射撃を行う。台湾への軍事的圧力の強化を警戒する必要がある。
中国の習近平国家主席は台湾統一を「歴史的任務」と位置付けている。しかし、台湾の人たちの多くは独立か「現状維持」を望んでおり、統一を支持する人は少ない。中国が台湾の民意を無視し、武力行使などで強引に統一を図ることは断じて容認できない。
一方で台湾では、ロシアによるウクライナ侵略に米国が軍事介入しなかったことを受け、台湾有事の際も米軍は支援してくれないという「米国の台湾放棄論」がくすぶっている。ペロシ氏はこうした不信感の払拭(ふっしょく)に努めた形だが、中国も台湾の対米不信を増幅させる情報戦を展開している。中国が米国と台湾との間にくさびを打ち込み、台湾を取り込もうとする動きに屈してはならない。
バイデン米大統領は5月、中国が台湾に侵攻した場合に米国が軍事介入する意思があるかと問われて「それがわれわれの責務だ」と明言した。歴代米政権は台湾防衛を明言しない「戦略的曖昧さ」を維持してきたが、これを見直すべきだとの声も上がっている。
蔡氏はペロシ氏との会談で「主権を維持し、民主主義の防衛線を守る」と述べ、台湾海峡の平和と安定を維持するために自衛力を高める決意を述べた。米国は台湾の抑止力向上に向けた支援を強化することが求められよう。
米国は台湾関係法で台湾に関する基本政策を定めている。これに対し、日本と台湾との関係には法的な裏付けがない。中国による侵攻への懸念が高まる中、米国は台湾との一層の関係強化を図っている。米国の同盟国である日本も同様の取り組みが必要だ。
日本版「台湾関係法」を
台湾と日本最西端の沖縄県・与那国島は、約110㌔しか離れていない。まさに台湾有事は日本有事である。
これに備えるには、日本版「台湾関係法」を制定して台湾との防衛協力を進めなければならない。自由と民主主義の価値観を共有する日米台が連携し、中国に対抗すべきだ。