トップオピニオン社説【社説】米中首脳会談 米国は台湾への関与強化を

【社説】米中首脳会談 米国は台湾への関与強化を

バイデン米大統領と中国の習近平国家主席が電話会談を行い、緊張が続く台湾情勢などについて協議した。

ロシアのウクライナ侵略を受け、中国による台湾侵攻への警戒が強まっている。バイデン政権は対中抑止に向け、台湾への関与を強めるべきだ。

 習氏「外部の干渉に反対」

3月以来となった首脳対話では、ウクライナ侵略や気候変動なども議論のテーマとなった。台湾情勢に関しては、バイデン氏が台湾海峡の平和と安定を損ない、一方的に現状を変更する試みに強く反対する考えを強調したことに対し、習氏は「外部勢力の干渉に断固反対だ」と反発した。

習氏は台湾統一を「歴史的任務」と位置付け、武力統一を排除しない姿勢を示している。昨年3月には米インド太平洋軍のデービッドソン司令官(当時)が、6年以内に中国が台湾を攻撃する恐れがあると警告するなど懸念が強まっている。

一方、バイデン氏は今年5月、日米首脳会談後の共同記者会見で、中国による台湾侵攻に米国が軍事介入する意思があるかと問われて「それがわれわれの責務だ」と明言した。歴代米政権は台湾防衛を明言しない「戦略的曖昧さ」を維持してきたが、台湾では中国を牽制(けんせい)する発言として歓迎された。

台湾では、米国がウクライナ派兵を否定していることで、中国が武力侵攻しても「米国は台湾も見捨てるのでは」という意見も出ている。中国が不信感をあおる情報を拡散し、台湾の人々の不安を増大させようとすることへの警戒も求められる。

米国は台湾関係法で台湾への武器供給を含む安全保障協力を約束している。台湾の抑止力向上に努めるとともに「戦略的曖昧さ」を見直すなど信頼関係を強化する必要がある。

台湾をめぐっては、ペロシ米下院議長が8月に訪問を計画しているとされ、中国が猛反発している。習氏は会談で「火遊びをすれば必ず焼け死ぬ。米側がこの点を理解することを望む」と強く威嚇し、計画中止を迫ったとみられる。露骨な脅しであり、断じて容認できない。

中国の目指す台湾統一は、台湾の民意に反している。台湾の蔡英文総統は昨年10月、辛亥革命を記念する「双十節」(建国記念日)の式典で演説し、中台関係について「(統一でも独立でもない)現状維持こそがわれわれの主張だ」と強調した。

民主主義が根付いた台湾を共産党一党独裁体制の中国が支配するようになれば、権威主義に対する民主主義の敗北だと言わざるを得ない。両者の戦いの最前線に立っているのがウクライナと台湾だ。

米国だけでなく、日本をはじめとする米国の同盟国や友好国も、中露の力による一方的な現状変更の試みを容認せず、ウクライナと台湾を支え続けなければならない。

 日米同盟強化で抑止せよ

凶弾に倒れた安倍晋三元首相は昨年12月に「台湾有事は日本、日米同盟の有事だ」と警告した。日本は安倍氏の遺志を継いで防衛力強化を進めるとともに日米同盟強化を中国の台湾侵攻抑止につなげるべきだ。

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