トップオピニオン社説【社説】サル痘初確認 特性に関する十分な情報を

【社説】サル痘初確認 特性に関する十分な情報を

欧米などで報告が相次ぐ天然痘に似た「サル痘」について、国内でウイルス感染者が初めて確認された。

政府は現在のところ保健医療体制への影響は限定的だとしているが、感染拡大防止に向けて感染者の早期発見と共にサル痘の特性に関する十分な情報の発信に努める必要がある。

欧米で5月以降に拡大

感染者は欧州に渡航歴のある30代の男性だ。発熱や発疹などがあるが、状態は安定しているという。サル痘の感染経路は主に飛沫(ひまつ)や接触感染で、感染すると7~21日(平均12日)の潜伏期間を経て、発熱や頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛などが1~5日続いた後、天然痘に似た水ぶくれなどの発疹が顔や手足に広がる。

サル痘は主にアフリカで流行する感染症だ。国内ではデング熱や狂犬病などと同じ4類感染症に分類され、患者が発生した場合、医師は保健所に届け出る必要がある。

欧米などで5月以降、流行国への渡航歴がない人の感染が報告され、広がりを見せている。先週までに75の国・地域で1万6000人以上の感染者が確認された。

世界保健機関(WHO)はこのほど「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に当たると宣言。各国に感染拡大防止に向けて取り組みを強化するよう求めた。WHOによると、欧米の患者はほとんどが男性で、男性間で性的な接触があったケースが多い。

とはいえ、濃厚接触をすれば性別や年齢を問わず感染する。多くは2~4週間で自然回復するが、小児や妊婦、免疫力が低下した人は重症化する場合もあるので注意が必要だ。致死率は1~10%とされ、アフリカ大陸以外での死亡例は確認されていないという。

後藤茂之厚生労働相は「直ちに新型コロナウイルスのような大規模感染が起こるものではないと考えている」と述べた。政府は混乱を招くことのないようサル痘についての基本的な情報を発信するとともに、感染が拡大した場合の備えも万全にすべきだ。

厚労省は6月、法律に基づく特定臨床研究として、サル痘にも効果が期待できる天然痘のワクチンや治療薬を使用できる体制を構築した。ワクチンは国内でもテロ対策のために生産、備蓄されている。サル痘にも正式に使えるよう手続きを急ぐ必要がある。

感染拡大を防ぐには、感染者の早期発見と共に接触者の追跡も重要だ。国内で初めて感染が確認された男性には、1㍍以内の接触があった人が1人いたため、東京都はこの接触者の健康観察を続けている。発熱や発疹などの症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診するよう一人一人が心掛けたい。

日常の感染対策徹底を

最も大切なのは、日常の基本的な感染対策の徹底だ。サル痘の感染防止には、新型コロナと同様に手指消毒やマスク着用が求められる。

猛暑の中で新型コロナ流行の「第7波」が続いている。マスクに関しては熱中症にも注意しながら適切に着用したい。

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