今回の参院選の公約で、各党は少子化対策として出産育児一時金や児童手当の増額など子育て支援の強化を主張している。だが、少子化の流れを大きく変える力があるとは思われない。
有権者に耳当たりはいいが、財源問題を棚に上げた予算ばらまき競争の観を呈していると言っても過言ではない。少子化問題に正面から取り組む、もっと根本的な施策が必要だ。
進む非婚化・晩婚化
厚生労働省の人口動態統計によると、2021年に生まれた子供の数は過去最少の81万1604人。前年比約3万人の減少だ。合計特殊出生率は1・30。前年より0・03ポイントの低下で、過去最低の1・26(05年)に近づいた。
歯止めの掛からない少子化への対策として、自民党は「『こどもまんなか』社会を実現する」として子供関連予算の倍増を掲げている。立憲民主党は関連予算を倍増させ、国内総生産(GDP)比3%台にする目標を盛り込んだ。公明党は「子育て応援トータルプラン」の策定を打ち出している。
各党は出産費用への支援や教育支援策などにも重点を置いている。少子化の原因として「子育てと教育にお金がかかり過ぎる」という通念を抱く有権者を意識したものとみられる。
子育て支援への予算増は必要な施策である。しかし、それで今の少子化の流れを大きく変えられるとは思われない。各党の公約は、国家的な危機である少子化問題に正面から取り組む施策というより福祉政策と言うべきものだ。福祉に重点を置けば票の獲得につながるだろうという思惑が透けて見える。
少子化対策としてまず考えなければならないのは、いかに非婚化・晩婚化のトレンドを変えることができるかである。
昨年結婚したカップルは50万1116組と戦後最少で、新型コロナウイルス禍前の19年と比べると10万組近く減った。21年の平均初婚年齢は男性31歳、女性は29・5歳と晩婚化が進み、50歳までに一度も結婚したことのない人の割合を示す生涯未婚率は、15年時点で男性23・4%、女性14・1%となっている。
出生率を都道府県別で見ると、最高が沖縄県の1・80に対して最低が東京都の1・08となっている。未婚率も首都圏や大阪など関西の都市部が高い。出産適齢期の女性が地方から出生率の低い東京へ移住し、地方での低下の原因となっている。
都市化が晩婚化の大きな原因の一つになっていることを、もっと掘り下げて分析する必要がある。経済的な側面とともにライフスタイルさらには価値観の変化も注視して解決策を考える必要がある。
新型コロナの感染拡大でテレワークやリモートワークが推奨され、感染リスクを避けるために若い世代を中心に地方移住の動きが出ている。この動きを大きなトレンドにできるかどうかは政治家たちの手腕次第だ。
東京一極集中から脱却を
東京一極集中からの脱却は少子化克服の重要なカギである。
これを柱の一つとした大胆で総合的な未婚化・晩婚化対策に正面から取り組んだ議論を望みたい。