トップオピニオン社説【社説】電力需給逼迫 原発再稼働推進が不可欠

【社説】電力需給逼迫 原発再稼働推進が不可欠

厳しい日差しの中、日傘をさして歩く人(後方は熊本城)。=28日午前、熊本市中央区

6月としては異例の猛暑が原因で電力需給が厳しい見通しになったとして、東京電力管内では電力需給逼迫注意報が発令されている。

政府は家庭や企業に節電への協力を要請しているが、熱中症予防のための適切なエアコン利用などは必要である。無理のない範囲で節電を心掛けたい。

 梅雨明けで厳しい暑さ

東北以外の地方は既に梅雨明けし、厳しい暑さに見舞われている。総務省消防庁によると、20~26日の1週間に熱中症で救急搬送された人は全国で4551人(速報値)に上った。6月における1週間の搬送人数としては2010年以降で最多となり、前週の1337人と比べて約3・4倍に急増している。

気象庁は7~9月の3カ月予報で、北日本、東日本、西日本はいずれも平均気温が「平年より高い」としている。今後も熱中症にかかる人が増えるとみられる中、エアコンの利用を欠かすことはできない。

政府は、電力供給力が需要に対してどれだけ余裕があるかを示す「予備率」が5%を下回ると予想される時に電力需給逼迫注意報、3%を下回る場合は電力需給逼迫警報を発令しているが、夏や冬の逼迫は常態化しつつあると言えよう。

背景には、天候で出力が変動する太陽光など再生可能エネルギーの普及が進んでいることがある。一方、臨機応変な「たき増し」で出力を補う火力発電所は脱炭素化で廃止が相次いでいる。20年度は約1600万㌔㍗の設備が休止した。政府や電力各社は火力発電所を再稼働させるなど需給逼迫への対策を急いでいるが、老朽化した発電所はトラブルの発生が懸念される。

需給逼迫の回避には、安全が確認された原発の再稼働を進めることが求められる。11年3月の東日本大震災後に再稼働した6原発は全て西日本に位置しており、東電管内の逼迫の原因となっている。

18年9月の北海道地震では、道内ほぼ全域の295万戸が最長2日間にわたって停電した。北海道電力が石炭火力の苫東厚真発電所(厚真町)に発電量を集中させていたためで、泊原発(泊村)が再稼働していれば大規模停電は発生しなかったとの指摘もある。

東電管内でも、停止中の柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)を運転すれば、約270万㌔㍗を確保できる。ただテロ対策に不備が相次ぐなどの不祥事があったため、再稼働の見通しは立っていない。

しかし、需給逼迫が頻発する状況が続けば電力が不足して大規模停電に陥る恐れもある。猛暑や厳寒の中で停電になれば、生命の危険に関わる事態となりかねない。東電は原発再稼働に向け信頼回復を急ぎ、電力確保に全力を挙げるべきだ。

首相は指導力発揮を

政府は、ウクライナ情勢を受けた原油価格高騰を踏まえ、原発再稼働の審査を迅速化する方針だ。岸田文雄首相は、原子力規制委員会による審査について「合理化や効率化、審査体制の強化」が必要だと指摘した。電力供給不足に備えるためにも、再稼働推進に向け、強い指導力を発揮しなければならない。

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