生活必需品の値上げが相次ぐ中での今回の参院選。ガソリンや電気・ガスなどエネルギー関連まで含め、家計への負担は重くのしかかり、経済への悪影響も懸念される。
負担軽減へ各党がさまざまな政策を掲げ舌戦を繰り広げているが、実効性、実現性で首を傾(かし)げたくなるものが少なくない。美辞麗句に惑わされず中身をしっかりと確かめたい。
賃上げしても追い付かず
食品の値上げが連日のように相次ぐ。今後も値上げラッシュは続き、帝国データバンクの調査によると、今年中での値上げは1万品目以上に及ぶ。これにガソリンや電気・ガス料金などの引き上げを含めると、家計の負担は年間で5万~7万円にも達するという。
立憲民主党など野党は、消費税率の5%への引き下げなどを主張している。ただ減税した分だけ税収が不足するため、それをどう補うのか。一方、自民党はこれまでの対策の効果で海外より消費者物価は低く抑えられていると主張するが、連日の値上げを実感している国民にどこまで受け入れられるのか。
既に決定している住民税非課税世帯の子供1人当たり5万円の給付では対象が少ない。子供のいない、あるいは高齢者だけの低所得世帯もある。額としては国民民主党が提案する「インフレ手当」としての10万円給付が適当だが、同党の掲げる一律手当では対象が広過ぎである。
こうした家計支援が負担への直接的な対処とすれば、より前向きな政策が、先進国でも伸びが最低の「賃上げ」である。
連合による2022年春闘労使交渉の集計(5月31日時点)では、ベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた平均賃上げ率が2・09%と過去20年で2番目に高い引き上げ率になった。経団連が発表した22年夏のボーナス妥結状況では、前年比13・81%増の平均92万9259円と比較可能な1981年以降で最高の上昇率という。
新型コロナウイルス禍に伴う緊急事態宣言の解除によって、経済活動が正常化に向かいだしていることも追い風になっていよう。政策としては、こうした流れをいかに支援し強めていくかである。
立民や共産党などが訴える「最低賃金1500円」への引き上げは、現状を無視したリップサービスだと言うしかない。そんなことをすれば、中小企業は立ち行かず倒産し、失業が増えるばかりである。
賃上げの流れができつつあるとはいえ、物価上昇に追い付いておらず、4月の実質賃金は前年同月比1・7%減である。4月の消費者物価が同2・1%増と、消費税率引き上げの影響を除けば13年7カ月ぶりの2%超となったからである。5月の消費者物価も同2・1%増で、日銀が目標としていた2%超が2カ月連続である。
大規模緩和修正は不可欠
2%超はエネルギー価格の高止まりに加え、加工食品の値上げラッシュの影響である。日銀の目標達成は、こうした異常事態によるものだ。値上げを加速させているのが内外金利差拡大による円安であり、大規模緩和の修正は不可欠である。