
欧州連合(EU)が、加盟を申請したウクライナとモルドバを「加盟候補国」に認定した。
加盟実現までの道のりは長いが、EUと国際社会は、ロシアの侵略が続くウクライナへの支援を強化する必要がある。
「加盟候補国」に認定
認定は全会一致で決まった。ミシェルEU大統領は「これは地政学的な領域で団結と決意を示すメッセージだ」と強調。ウクライナのゼレンスキー大統領はツイッターで「EUとの関係における特別で歴史的な瞬間だ」と歓迎し、各国首脳らの支持に謝意を表した。
ウクライナはロシアによる侵略開始直後の2月末に加盟を申請し、ロシアの脅威にさらされるモルドバも3月初めに追随した。EUが申請から4カ月弱という異例の早さで認定し、両国への強い連帯姿勢を示したことを評価したい。
ウクライナ東部ルガンスク州の要衝都市セベロドネツクは、ロシア軍の激しい攻撃でウクライナ軍が撤退し、完全にロシアの占領下に入った。南東部の港湾都市マリウポリも先月陥落するなど、東部ドンバス地方の制圧に向けてロシア軍の攻勢が強まっている。
しかし、他国への侵略は決して許されない行為である。国連憲章は国際関係において「武力による威嚇または武力の行使」を慎むよう求めている。国連安全保障理事会常任理事国のロシアがこれに反したことで、ウクライナは西側諸国との一層の連携強化を図るようになったと言えよう。
ウクライナとモルドバは正式にEUと加盟交渉に入るため、改めて全加盟国の承認を得る必要がある。EUは、法の支配、民主主義、人権擁護、正常な市場経済などを加盟の基本条件とする。交渉開始には、35章のEU法に合致するように国内法を整備することが求められる。
ウクライナは汚職や人権問題などが課題として指摘されてきた。加盟実現までには長期間を要するとみられる。ただ重要なのは、EUがウクライナとの関係を強め、米国と共に重火器供与や武器使用のための訓練提供などの支援を続けることだ。
この点で気掛かりなのは、EU内の不協和音である。ウクライナ侵略をめぐって、ロシアの脅威にさらされるポーランドやバルト3国などは徹底抗戦を支持する一方、EU主要国であるドイツ、フランス、イタリアなどは早期停戦を図っている。背景には、侵略と対露制裁に伴う物価高などへの対応に苦慮していることがある。
だが、ロシアの力による一方的な現状変更を容認することはできない。ゼレンスキー氏は侵略以前の領土を取り戻すことを「勝利と見なす」としている。EUはこの目標達成に向け、足並みをそろえるべきだ。
日本は連携を深めよ
ウクライナ危機は日本にも安全保障上の課題を突き付けている。ロシアが支配地域拡大を続ければ、沖縄県・尖閣諸島や台湾に圧力を掛ける中国の動向にも影響する恐れがある。
日本はウクライナを支えるため、EUや米国との連携を深めるとともに、自国を守るための抑止力を強化する必要がある。