
国連総会で安全保障理事会の非常任理事国5カ国の入れ替え選挙が行われ、日本が国連史上最多の12回目の非常任理事国入りを果たした。安保理は常任理事国である中露両国の拒否権乱用などで機能不全に陥っている。改革への道筋を付けることが日本の大きな課題となる。
中露によって機能不全に
日本の任期は2023年1月1日から24年12月31日までの2年間。日本のほかにモザンビーク、エクアドル、マルタ、スイスが選出された。中立主義を国是とするスイスは02年9月の国連加盟以来、今回が初めての非常任理事国入りとなる。
安保理では常任理事国の米英仏と中露が激しく対立。先月には大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受けた米主導の対北朝鮮追加制裁決議案が「北朝鮮が困難に直面している時に追加制裁を提案するのは無責任」などと主張する中露の反対で否決されるなど、機能不全が浮き彫りとなっている。
国連は「国際の平和及び安全を維持する」(国連憲章)ために創設された。安保理は国連で唯一、加盟国に対し拘束力のある決定を下せる機関だ。しかしロシアはウクライナを侵略し、中国は南シナ海の軍事拠点化を進めるなど力による一方的な現状変更を図っている。このような中露が常任理事国であれば、安保理が機能不全に陥るのも無理はない。
また北朝鮮の弾道ミサイル発射は安保理決議に違反する行為であり、安保理が迅速に対応するのは当然のことだ。中露が拒否権を乱用して追加制裁決議案を否決に追いやったのは、常任理事国としての責任を放棄するものだと言わざるを得ない。安保理改革は喫緊の課題である。
松野博一官房長官は「非常任理事国としての活動を通じて実績を積むことで、日本の常任理事国入りを含む安保理改革に弾みをつけていきたい」と述べている。日本はかねて常任理事国入りを目指しており、ドイツ、ブラジル、インドとの4カ国グループ(G4)で連携強化を図ってきた。
G4は国連創設60年に当たる05年の7月、常任理事国を6カ国増やして安保理を全体で計25カ国に拡大し、新常任理事国の拒否権行使を15年間凍結する内容の枠組み決議案を総会に提出した。だが、採択に必要な加盟国の3分の2以上の賛成を得られなかった。
ただ現在、安保理改革の必要性は高まっている。もちろん簡単ではないが、日本は非常任理事国入り決定を契機に改革への支持を粘り強く広げていく必要がある。これ以上、安保理を機能不全の状態にしておくことはできない。
改憲で平和実現に尽力を
安保理改革への理解を得るには、日本がこれまで以上に世界の平和実現に尽力することも求められよう。
日本は日米同盟を基軸に「自由で開かれたインド太平洋」構想を進めている。ただ安全保障面で一層の貢献を果たしていくには、憲法を改正して集団的自衛権行使を全面容認するなどの取り組みが必要だ。今度の参院選では与野党の活発な議論を期待したい。