トップオピニオン社説【社説】新しい資本主義 成長強化で回復軌道を着実に

【社説】新しい資本主義 成長強化で回復軌道を着実に

政府は岸田文雄政権の看板政策「新しい資本主義」の実行計画と経済財政運営の基本指針「骨太の方針」を決定した。

首相が当初描いた「分配重視」はトーンダウンした形だが、日本経済の実情と内外の諸環境条件を考慮した政策、方針として評価したい。政策の細部を詰め、着実な実行を望みたい。

企業の人的投資を2倍に

実行計画は「人」「新興企業」「科学技術」「グリーン・デジタル」の4分野に重点投資を行い、経済を新たな成長軌道に乗せることを目指す。

特に人への投資では、3年間で4000億円規模の施策パッケージを講じ、非正規雇用者を含む約100万人を対象に能力開発などを支援。企業の人的投資を早期に2倍にする。

また「最低賃金の引き上げは重要な政策決定事項」として、全国平均で現在930円を、可能な限り早期に「1000円以上」とする方針を示した。

新興企業に関しては同企業をスタートアップと位置付け、5年で10倍増と新規創業を支援し、日本経済の活力とイノベーションを通じて成長を促す。海外のベンチャーキャピタルの誘致なども進める。

4分野の重点投資は、岸田政権の成長戦略の要となるものである。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」では、2014年と19年と2度の消費税増税の影響もあり、成長戦略が十分な効果を発揮できず、低成長に甘んじてきた。

岸田政権は安倍政権のこうした轍を踏まず、成長軌道を着実に築いてほしい。

この点で、「骨太の方針」が国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する目標について、25年度としてきた達成期限を明示しなかったことを評価したい。アベノミクスが十分な成果を上げ得なかったのも、生きた経済の状況を無視した、この目標に縛られ、成長軌道を歩みつつあった状況を自ら増税で壊してしまったからである。

厳しい安全保障環境から不可欠な防衛力強化のためにも、硬直的な財政健全化目標に縛られた財政運営は現実にそぐわないことは明らかであろう。

また評価すべきは、科学技術やグリーン・デジタルなど重点投資で単年度主義の弊害が是正され、民間投資の呼び水となる効果的な支出を行う方針が示されたことである。これらが十分な成果を上げるには、中長期的な視点が欠かせないことは言を俟(ま)たない。

岸田首相は首相就任前や就任当初、分配重視の姿勢を示していたが、持論の「成長と分配の好循環」実現には低成長にあえぐ日本経済の現状では難しいため、分配の原資となる成長の強化に踏み出したわけである。

新型コロナウイルスの第6波の感染拡大がほぼ収束に近くなっているのも、首相にとっては援軍であり、訪日観光での入国規制が緩和されるなど経済活動も正常化に近づきつつある。

大規模金融緩和の修正を

目下の懸念は物価高と輸入インフレを招く過度な円安の進行である。日銀は現在の大規模金融緩和策を修正し円安圧力の減殺に取り組むべきである。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »