【社説】太平洋島嶼国 中国の覇権主義を抑えよ

中国の王毅国務委員兼外相が南太平洋の島嶼(とうしょ)国を歴訪した。バイデン米政権が構築を目指す「対中包囲網」を切り崩すため、太平洋諸国との関係を強化することが狙いだ。

中国の覇権主義的な動きを抑えるため、日米両国などはこうした国々との連携を深める必要がある。

王外相が8カ国を歴訪

王氏はソロモン諸島、キリバス、サモア、フィジー、トンガ、バヌアツ、パプアニューギニア、東ティモールの8カ国を公式訪問した。中国は4月、ソロモンと中国の軍艦寄港や軍派遣が可能となる安全保障協定を結んでいる。

東・南シナ海で力による一方的な現状変更を図る中国が、南太平洋の軍事拠点化を進めようとする動きに、日米やオーストラリアなどが警戒感を示したのは当然である。中国がこの地域の島嶼国に海軍の補給拠点を構築できれば、対米防衛ラインで伊豆諸島や米領グアムを結ぶ「第2列島線」を越えた海域での作戦も可能になる。

ただ島嶼国側には、インド太平洋を舞台とした米中の覇権争いに巻き込まれたくないとの思惑がある。王氏は歴訪中、フィジーの首都スバで中国・太平洋島国外相会合をオンライン形式で開催したが、中国側が示した安全保障面での協力強化などの協定案は一部の国の反対で合意に至らなかった。

この地域では、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島、パラオの3カ国が「自由連合盟約」によって、米軍駐留や国防権限の米国への委託を認めている。ミクロネシアのパニュエロ大統領は中国の協定案を受け入れないよう、他の島嶼国首脳らに書簡を送ったという。地域の秩序を乱そうとする中国の振る舞いは許されない。

王氏の歴訪には、台湾を国際的に孤立させる狙いもある。訪問先のうちソロモンとキリバスは、2019年に台湾と断交して中国と国交を結んだ。一方、この地域ではマーシャル諸島、パラオ、ナウル、ツバルの4カ国が台湾との外交関係を維持している。

この4カ国が中国によって切り崩されれば、台湾の孤立が深まるだけでなく「自由で開かれたインド太平洋」の実現も難しくなる。日米豪などは中国の海洋進出に対抗すべきだ。

豪州はウォン外相を先月下旬にフィジーへ派遣し、米国は中国依存脱却を目指す経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」へのフィジーの参加を発表した。米国は1993年に閉鎖したソロモンの米大使館再開も予定している。実効性ある対抗策を進めてほしい。

 日本は関係強化を図れ

日本も海上保安能力強化のための警備艇供与など、ミクロネシアへの計7億円の無償資金協力を決定した。来年1月にはキリバスに大使館を開設する。日米豪とインドの連携枠組み「クアッド」による中国への牽制(けんせい)も強める必要がある。

日本は3年に一度、太平洋島嶼国・地域との首脳会議「太平洋・島サミット」を開催してきた。こうした枠組みなどを活用して関係強化を図らなければならない。

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