【社説】泊原発差し止め 適合審査中で理に適わない

北海道泊原子力発電所(北海道泊村)=2020年6月13日、北海道岩内町から撮影

札幌地裁が北海道電力の泊原発3基の運転差し止めを命じた。「津波に対する安全性の基準を満たしていない」(谷口哲也裁判長)というのがその理由だが、当の原発が原子力規制委員会の新規制基準適合審査を受けている最中に下された理に適(かな)わない判決だ。

司法独自の判断は不適切

道内の住民ら約1200人が原告となり、東日本大震災後の2011年秋から係争していた裁判。原告側は「大地震を引き起こす活断層が存在するのにその揺れを想定しておらず、津波も今の防潮堤では防げない」と主張し、電力会社側は活断層の存在を否定するなどした。

この間、北電は定期検査のため運転を停止していた泊原発の3基の再稼働を目指し、13年7月に規制委に適合審査を申請。現在もその審査が続けられている。北電は14年に防潮堤を建設。さらに今年3月からは、強固な岩盤支持構造の防潮堤に造り変えるための準備工事に着手したところだ。

津波防護施設について「防潮堤の地盤に液状化などが生じる可能性は低い」と主張。規制委と北電との間では、原発敷地内の断層の活動性について議論が続いていたが、昨年7月に「活断層ではない」とする北電の主張が科学的に認められている。

それに対し、札幌地裁は「津波防護機能を保持できる施設は存在せず、安全性の基準を満たしていない」と断じ、運転差し止めを命じたわけだ。総合的な安全対策に言及せず、予想される津波の高さだけで単純に決した。大いに遺憾だ。

最高裁が1992年に伊方原発訴訟で出した判決では、原子炉の安全審査には専門技術的な総合的判断を要することなどから「裁判所が独自の立場から判断を下すことは不適切」としている。地裁もこの判例に従う必要がある。

ただし、規制委の適合審査の遅れにも問題がある。規制委創設当初、設置変更許可、設工認(工事の方法)認可、保安規定審査の3手続きを並行してやり、半年で結果を出すとしていたが、実際には何年もかかっている。政府の「エネルギー基本計画」では、電源全体を下支えすることを意味する「重要なベースロード電源」の一つに原発を位置付け、再稼働を進める方針だ。規制委の人材を強化してスムーズな審査体制を整え、国の基本計画を死守する意気込みを見せるべきだ。

泊原発は加圧水型軽水炉3基を備えた道内唯一の原発で総出力は207万㌔㍗。東日本大震災前までは道内の電力供給量の4割を担っていた。

北海道では18年9月の地震で初の全域停電(ブラックアウト)が発生。泊原発が稼働していれば防げた可能性が高い。安全性追求とともに生活の中の原子力エネルギーの意義をもう一度見直したい。

上級審では覆される

北電は控訴する方針。東京電力福島第1原発事故後、各地で起きた原発の運転差し止めなどをめぐる訴訟では、住民側の主張を認める複数の司法判断が出ているが、いずれも上級審で覆されている。北電は心して臨まなければならない。

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