【社説】首都直下地震 一層の対策で被害最小化を

東京都は首都直下地震などによる被害想定を10年ぶりに見直し、都心南部でマグニチュード(M)7・3の直下型地震が発生した場合、都内の死者は最大で約6100人、揺れや火災による建物被害は約19万4400棟に上ると推計した。

2012年に公表した従来想定と比べ、被害を3~4割軽減できると見込んだのは、住宅の耐震化や不燃化の対策が進展したためである。しかし、残された課題も多い。

タワマン増が課題に浮上

12年の想定では、震災時に延焼の恐れがある老朽木造住宅の密集地域(木密地域)の存在が問題視された。都は対策を進め、こうした地域は12年度末の1万6000㌶から20年度末は8600㌶にまで減った。

ただ残る地域については、住民の資金難や複雑な権利関係などが理由で、撤去や建て替えが困難なケースが多いという。都は安全な地域に集合住宅を整備し、木密地域の住民が移転できる事業も始めた。対策を急ぐ必要がある。

都は今後の対策次第で、さらに被害を減らせるとしている。1981年の耐震基準を満たした建物が100%になれば今回想定より約6割、規制強化された2000年耐震基準であれば約8割減るとの試算を示した。1981年基準による都内の住宅耐震化率は2020年度で92・0%で、10年前より約11ポイント向上したが、さらに耐震化を進めて被害の最小化に努めたい。

火災防止では、地震の揺れを感知して通電を遮断する「感震ブレーカー」の設置が重要だ。11年の東日本大震災など過去の大規模地震では、原因が特定された火災の半数が、停電復旧時の通電火災など電気に由来していた。

現在、都内の感震ブレーカーの設置率は8・3%にとどまっている。都は、住民らによる初期消火率を向上させた上で設置率を25%にすれば火災被害を約7割、50%であれば約9割減らせるとしている。

さらに都はタワーマンションに関して、エレベーターの停止で住民が孤立するリスクを挙げた。長期化して体調不良に陥れば「最悪の場合、震災関連死に至る可能性がある」と強調した。都内の高さ45㍍を超える高層建築物は、20年までの10年で約1・4倍に増えており、新たな課題となっている。

停電が続いて空調が使用できなければ、避難所はもちろん在宅避難の場合でも、夏場は熱中症や脱水症状、冬場は風邪などで体調を崩す可能性がある。スマートフォンによる連絡や情報収集なども難しくなる恐れがある。首都直下地震は今後30年以内に70%の確率で発生すると見込まれており、こうした課題への対応は急務である。

都は3県とも協力を

政府が13年に公表した被害想定では、最悪のケースで埼玉、千葉、東京、神奈川の1都3県で2万3000人が死亡するとされている。都は3県とも協力して対策を講じる必要がある。

首都直下地震では、政治や行政、経済など国の中枢機能に与える影響が懸念されている。打撃を緩和するため、政府は首都機能の分散も進めるべきだ。

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