Homeオピニオン社説【社説】ウクライナ侵略 西側諸国は対露戦の決意示せ

【社説】ウクライナ侵略 西側諸国は対露戦の決意示せ

ロシア軍の攻撃により破壊された中学校の校舎=5月18日、ハリコフ郊外メレファ(UPI)

ロシアによるウクライナ侵略が始まってから3カ月が経過した。ロシアのプーチン政権は首都キーウ(キエフ)や北東部ハリコフの攻略に失敗する中、南東部マリウポリに続き、東部ルガンスク州の完全制圧を狙うなど、東部2州から成るドンバス地方の支配地域の拡大に余念がない。

しかし、他国への侵略や民間人虐殺は国際法違反であり、断じて容認できない。ロシア軍はすぐにウクライナから撤退すべきだ。

アゾフ海沿岸部押さえる

ロシア軍の侵略に対する抵抗の象徴だったマリウポリの製鉄所が今月半ばに陥落した。これでロシア軍は、ドンバス地方から2014年3月に一方的に併合した南部クリミア半島に至るウクライナのアゾフ海沿岸部を完全に押さえたことになる。

さらに、東部ルガンスク州でウクライナ軍支配地域として残るセベロドネツクなどの掌握を目指している。プーチン大統領は南部住民を対象にロシア国籍の取得を簡素化する大統領令に署名するなど「ロシア化」を強引に進めようとしている。

プーチン政権は、ウクライナの「中立化」や「非ナチ化」を侵略の目標に掲げ、ゼレンスキー政権を「ネオナチ」扱いしている。だが、ロシア軍の損害は甚大だ。英国防省は、ロシア軍が侵略開始時に投入した地上戦力の3分の1を失ったと分析している。ウクライナ軍が、欧米から供与された重火器を効果的に使い、反撃に成功したことによるものだ。

欧米諸国は当初、ロシアを刺激することを避けるため、重火器提供には慎重だった。しかし、キーウ近郊ブチャなどでロシア軍に殺害された民間人の遺体が多数見つかったことで態度を変えた。ロシアは、このような蛮行が自らの首を絞めることを知るべきだ。

ロシアが侵略したのは、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を防ぐため、ウクライナの加盟を阻止することが目的の一つだった。だが侵略を受け、中立を保ってきた北欧のフィンランドとスウェーデンが加盟を申請するなど墓穴を掘る結果となっている。

ゼレンスキー大統領は、ロシアの侵略が始まった2月24日以前の領土を取り戻すことを「勝利と見なす」と述べた。ウクライナ政府内ではクリミア半島奪還を目指すとの声も上がっている。力による一方的な現状変更が許されないのは当然であり、こうした見解を支持したい。

一方、プーチン氏はクリミア半島のほか、ドンバス地方も「歴史的領土」と呼んでいる。ロシア軍の制圧地域で広範囲にわたってウクライナ軍が反撃すれば、生物・化学兵器が使われる恐れもある。

力による現状変更許すな

侵略はもちろん、大量破壊兵器の使用を容認するわけにはいかない。これまで西側諸国はウクライナへの軍派遣を避けてきたが、ロシアが化学兵器などを用いた場合は有志連合を構築して戦う覚悟を示す必要がある。中国などを牽制(けんせい)するためにも、力による一方的な現状変更、そして人道に反する行為を排除する姿勢を打ち出すべきだ。

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