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【社説】マイナス成長 物価高、円安リスクに備えを

2022年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質で前期比0・2%減、年率では1・0%減のマイナス成長だった。新型コロナウイルス変異株の感染拡大に伴う「まん延防止等重点措置」の影響で個人消費が振るわなかった。マイナス成長は予想されていたことであり止(や)むを得まい。

コロナ前の水準に届かず

問題は4~6月期以降である。原材料価格の上昇やロシアのウクライナ侵攻に伴い、世界経済の先行きに不透明感が強まっている。政府は物価高騰への緊急対策を決定したが、慢心することなく、景気動向を注視しリスクに備えるべきである。

マイナス成長は2四半期ぶり。これまでもそうだが、日本経済はこの2年間、コロナ禍の中、緊急事態宣言や重点措置を繰り返し、一進一退が続いて回復軌道に乗れないでいる。

1~3月期の実質GDP実額は年率換算で537兆円と、コロナ前の19年10~12月期の水準(541兆円)に届かず、政府目標は未達、既に同水準を回復した米欧に大きく後れを取る。

米欧との景気格差は金融政策の違いから内外金利差の拡大を招き、外国為替市場ではドル高・円安が進んだ。折からの原材料価格の高騰と相まって、賃上げの伸び以上に物価を押し上げる「悪い円安」が進む。円相場は現在、小康を保っているが、円安圧力にさらされている状況に変わりはない。

景気の着実な回復を進めることが重要である。重点措置の全面解除で、景気は持ち直しに向かっている。4~6月期はマイナス成長の反動もあり、比較的高めの数字が出そうだが、慢心は慎みたい。というより、安心できる状況ではない。原材料価格の上昇と過度な円安進行の懸念である。

原材料価格の上昇はウクライナ危機の収束が見通せないこともあり、国際通貨基金(IMF)などが経済見通しを引き下げるなど、世界経済の先行きに不透明感をもたらしている。その影響は日本も例外ではない。

むしろ、原材料高と円安の同時進行は、エネルギーと原材料の多くを海外に依存する日本にとっては深刻である。21年度の貿易赤字は5兆3749億円(通関ベース)と過去4番目の大きさで、東日本大震災後に原発が稼働を停止し火力発電用の燃料輸入が増えていた14年度以来7年ぶりの水準。月ベースでは今年4月まで9カ月連続の赤字である。

円安も輸入額の増大に拍車を掛け、交易条件の悪化をもたらす。貿易赤字は円安の一要因でもあり、円安を通じた輸入原材料費の上昇は企業の利益を圧迫するだけでなく、ガソリンや生活費需品の値上げが現実に相次ぎ家計への打撃も懸念される。

補正による対策は不可欠

1~3月期のマイナス成長は輸出以上に輸入が伸びた要因が大きい。原材料価格高騰の影響ももちろんあるが、内需は数字ほど悪くない可能性もある。ただ、回復力の弱さは歴然であり、2兆7009億円の補正予算案による物価高騰への緊急対策は欠かせない。物価高の進行動向を注意深く監視しリスクに適宜備えることが必要である。

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