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【社説】こどもの日 スマホ置いて自然に触れよう

きょうは「こどもの日」。3年ぶりで行動規制なしの大型連休中でもあり、各地の行楽地が賑(にぎ)わっている。今改めて、平和な日本で家族そろって休日を過ごせる幸せをかみしめている家庭が多いのではないか。

その対極にあるのがウクライナだ。戦争のさなかにある子供たちの恐怖を思うと胸が痛む。命を失った幼子もいる。彼の地に一日も早く平和な日が訪れることを祈りたい。

 他人事でない露の蛮行

日本人にとって、東欧におけるロシアの蛮行は地理的には遠くとも、さまざまな意味で他人事(ひとごと)ではない。スマートフォンの小さなモニターに映し出される建物の砲撃跡は生々しく、路上の遺体は正視に堪えない。こうした映像に曝(さら)されれば、心に傷を負う子供もいるはずだ。

戦争の残酷な映像がテレビで茶の間に届いた20世紀は「映像の世紀」と言われた。しかし、誰もがスマホを持つ現在、フェイクニュースを含め、映像はデジタル化され影響力を格段に高めている。子供が日頃、どんな情報に接しているのか、大人は注意を払う必要がある。

脳科学者の小泉英明さんは解剖学者の養老孟司さんとの対談で「脳が柔らかな幼少期は特に、自然のなかに身を置き、同時にたくさんの人と接して、できるだけ多くの実体験をさせることが大事」と述べている(『子どもが心配』)。

人工的に作られた音・色・形は自然界のそれとは情報の豊かさにおいて比べものにならないという。デジタルデトックスではないが、スマホを置いて家族みんなで自然と触れ合う機会を増やしたい。

こどもの日に合わせて総務省が発表した子供の推計人口は1465万人で、41年連続の減少となった。ウクライナの惨状をスマホで見て「日本もいつか、戦争に巻き込まれるかもしれない。家庭を持っても子供を幸せにできるか、不安だ」と、将来を悲観する若者が出てきても不思議ではない。少子化はさらに進む懸念がある。

政府はさまざまな少子化対策を打ってきた。共働き世帯のための子育て支援などが中心だが、しかし子供を増やす要諦は「結婚して子供を育てたい」と強く望む若者をいかに育てるかだろう。結婚したいとも、子供を欲しいとも思わない若者が増えたのでは、少子化が解消するはずはない。

「なぜ現在の日本人は子どもを欲しいと思えないのか。さらに言えば、子どもが可愛いという感覚が失われつつあるのか。これこそが根本的な問題でしょう」(養老さん)。

子供を愛せない若者

数日前、ラジオのスイッチをひねると「こんにちは赤ちゃん」のメロディーが流れてきた。少し前には電車で、お母さんが抱っこする赤ちゃんが泣きだし、隣の若い女性がしかめっ面をし席を立ってしまった光景も見た。一人っ子で、赤ちゃんを抱っこした経験がなく感性が育っていないのか。

「こんにちは、赤ちゃん」と言えなくなった若者が増えているのであれば、養老さんの指摘するように、これこそ少子化の根源的な問題である。

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