【社説】日独首脳会談 対中露めぐる連携を強化せよ

岸田文雄首相がドイツのショルツ首相と首脳会談を行った。会談ではロシアのウクライナ侵略に関し、国際社会の毅然(きぜん)とした対応が重要との認識で一致。また、覇権主義的な動きを強める中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」実現への緊密な協力を確認した。欧州の主要国であるドイツと対中露をめぐる連携を強化すべきだ。

両国とも防衛費大幅増へ

ショルツ氏の来日は昨年12月の就任後初めて。日本との関係を重視し、アジア最初の訪問国に選んだとみていい。岸田首相は会談の冒頭で「欧州とインド太平洋の安全保障を切り離すことはできず、力による現状変更は、どこであっても断じて許されない」と強調。ショルツ氏は「民主主義や法の支配といった普遍的な価値をわれわれは共有している」と述べた。

ロシアのウクライナ侵略を受け、ショルツ氏は国防費を北大西洋条約機構(NATO)の目標「国内総生産(GDP)比2%」を超える規模に増やす方針を示した。日本では、自民党の安全保障調査会が「NATOの目標も念頭に、5年以内に防衛力を抜本的に強化するために必要な予算水準の達成を目指す」などと強調する提言書を岸田首相に提出した。

これまでの日本の防衛費はGDP比1%前後であり、提言が実現すれば大きな政策転換となる。日独共に防衛費の大幅な増額を打ち出す中での首脳会談は時宜を得たものだと言えよう。

ただ、ショルツ氏の社会民主党(SPD)は過去に旧ソ連諸国と融和的な外交を行う「東方政策」を主導し、ロシアからの天然ガスパイプライン計画も推進してきた。日独の連携強化による対露牽制(けんせい)の効果を高めるには、ドイツがロシア産燃料への依存度を減らしていくことも課題となる。

ドイツはメルケル前政権時、最大の貿易相手国である中国を重んじてきた。メルケル前首相の中国への訪問回数は、日本の2倍の12回に上る。しかし、中国企業による独企業買収などで懸念が広がった。

20年9月には「インド太平洋指針」を策定し、東・南シナ海で覇権主義的な海洋進出を強める中国を念頭に「ルールに基づく秩序」などを掲げた。昨年11月には、フリゲート艦「バイエルン」がドイツ軍艦として19年ぶりに日本に寄港。海上自衛隊と共同訓練を行ったほか、朝鮮半島近海で北朝鮮船舶が洋上で物資を積み替える「瀬取り」の監視活動にも参加した。

ショルツ氏は「価値の外交」を前面に押し出している。首脳会談でインド太平洋地域での連携強化で一致したほか、中国に関して香港や新疆ウイグル自治区の人権状況への深刻な懸念を共有したことは評価できる。

重層的な関係構築を

日独両政府は昨年4月、初の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)を開催し、第2回会合も早期に行う方向だ。さらに首脳会談では、両国の首脳と閣僚が参加する政府間協議を新たに立ち上げ、来年開催を目指すことでも合意した。

経済安全保障での協力なども含めた重層的な関係構築が求められる。

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