フランス大統領選の決選投票が行われ、現職で中道のエマニュエル・マクロン大統領が右派政党「国民連合(RN)」のマリーヌ・ルペン候補を破って再選を果たした。
ロシアによるウクライナ侵略が続く中、マクロン氏には欧米と結束してウクライナを支援し、経済制裁強化などでロシアへの圧力をかけていくことが求められる。
4割の票を得たルペン氏
現職が再選されたのは2002年のシラク元大統領以来20年ぶりとなる。ウクライナ情勢への対応などが評価されたことに加え、「極右」のルペン氏を敬遠する有権者が多かったことが要因となった。しかし同じ顔合わせの前回選挙ではマクロン氏の圧勝だったが、今回はルペン氏の得票が4割を超え、現政権に対する有権者の不満が改めて示された。
今回は、ウクライナ危機を受けた物価高騰や対露制裁、欧州連合(EU)との関係などが争点になった。マクロン氏は1期目で富裕層に有利な政策を進め、庶民層の反発を招いた。勝利演説の中では「より公平で平等な社会のために働き続ける」と表明し、今までにない謙虚な姿勢を見せた。こうした公約を実現し、安定的な政権基盤を築けるかが今後の課題となろう。
一方、ルペン氏は過激な移民排斥発言を控えてイメージの穏健化に努め、家計支援策を柱に若年層や庶民層の支持を拡大した。だが、雇用や公的手当で「仏国籍者優先」を公約に掲げたことなどが「極右」を印象付けたようだ。
ロシアのプーチン大統領との交遊を問題視する声が高まったこともマイナスになった。北大西洋条約機構(NATO)の統合軍事機構からの離脱を訴えるルペン氏が当選すれば、ロシア寄りの外交方針を打ち出すことが懸念され、ドイツのショルツ首相は投票日直前、スペイン、ポルトガル両首相と連名で、仏有力紙などでマクロン氏への投票を求める異例の呼び掛けを行った。
フランスには独自外交の伝統がある。1966年には、対米依存の低下を目指したドゴール政権下でNATOの統合軍事機構を離脱。2009年にサルコジ大統領(当時)が復帰を正式に表明した経緯がある。
しかし、これまで中立政策を取ってきた北欧のフィンランドとスウェーデンが、ウクライナ危機を受け、NATOに加盟申請するとみられている中、フランスがNATOとの関わりを弱めれば欧州の結束を乱すことになろう。
マクロン氏再選を受け、EUのミシェル大統領はツイッターに「われわれはさらに5年間、フランスを頼りにできる」と強調。マクロン政権の「親欧州」路線継続を歓迎する姿勢を示した。欧州の主要国であるフランスへの大きな期待の表れだと言える。
対露包囲網の構築を
マクロン氏は、自由、基本的人権の尊重、法の支配などの普遍的価値を共有する欧州や米国との連携を深め、国際法に違反して他国を侵略し、民間人を虐殺するロシアへの包囲網を構築すべきだ。