【社説】知床観光船事故 安全管理は十分だったか

連絡が途絶えた観光船の捜索に向かう漁船=24日早朝、北海道斜里町

北海道・知床半島沖で観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が浸水し、乗っていた26人が行方不明となった事故では多くの死者が出ている。海上保安庁や自衛隊、消防などは行方不明者の捜索・救助に全力を挙げなければならない。
波が高く視界も不良

乗客乗員は計26人で、うち乗客は子供を含む24人。23日午前中に斜里町のウトロ港を出発後、知床半島西側沿岸を遊覧し、半島先端の知床岬で折り返して昼過ぎに帰港する予定だった。しかし午後1時20分ごろに「船首が浸水し、30度くらい傾いている」として救助を要請し、通報から約1時間後に連絡が取れなくなった。救助要請があったのは知床岬南西の海岸付近で、陸路での接近が難しく、海保や自衛隊、消防などは海上と上空からの捜索を続けている。

現場海域の23日午後1時半ごろの波の高さは3㍍。斜里町には強風注意報や波浪注意報が出されていた。昼ごろから視界も悪く、漁船は午前中に引き返していたという。

このような気象条件の中、なぜ出港したのか。地元漁師からも判断を疑問視する声が上がっている。観光船の船首部分には亀裂があったとの証言もある。運航できる状況だったとは到底考えられない。

観光船は昨年5月、海面に浮いたロープと接触して乗客3人に軽傷を負わせ、6月にはウトロ港近くの浅瀬に乗り上げる事故を起こし、運行会社「知床遊覧船」(斜里町)が行政指導を受けた。6月の事故では、今回の事故を起こした船長が業務上過失往来危険の疑いで書類送検されている。

この会社では昨年3月までにスタッフ5人が退職したという。その後、同社の船が岸に近付き過ぎたり、定置網の近くを通ったりするなどの様子が目撃され、操船技術の未熟さが懸念されていた。

事故を受け、国土交通省は運行会社に対し、海上運送法に基づく特別監査を実施。運輸安全委員会も船舶事故調査官3人を現地に派遣した。事故原因の徹底究明が求められる。

知床は2005年、豊かな海や生態系が評価され、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産に登録された。観光船が航行していた「カシュニの滝」周辺海域を通るコースは、自然遺産をめぐるクルーズの定番となっている。

知床半島は車で通行できない場所が多く、観光船は海上からヒグマなどを見ることができるため、観光客の人気を集めていた。こうした人気に乗じて利益を追求するあまり、運航会社が安全管理を軽んじていたのであれば許されない。

地元4社でつくる知床小型観光船協議会は、大型連休期間中の小型観光船の運航を自粛することを決めた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で観光客数が減少する中、地元の観光業にとっては大きな打撃となろうが、これだけ大きな事故が起きた以上、当然の対応である。

交通機関は他山の石に

大型連休を控える中、他の交通機関は今回の事故を他山の石とし、安全最優先で業務を遂行しなければならない。

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