
20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が米ワシントンで開かれた。
G20メンバーのロシアがウクライナを侵略してから初めての閣僚級会合で、米国や英国、カナダなどは抗議の意思を示すため、ロシアの参加者が発言する場面で退席した。力による一方的な現状変更を強行しただけでなく、ウクライナで多くの民間人を虐殺したロシアのG20参加が認められないのは当然だ。
共同声明採択は見送り
G20は参加国全体の国内総生産(GDP)が世界全体の大半を占め、リーマン・ショック後に世界経済の重要課題を議論する最上位の会合として位置付けられた。政治体制の違いを乗り越え、共通の利益を探るための枠組みだ。しかし今回は、西側諸国とロシア排除に反対する中国など新興国側との立場の違いが露呈した。
会議の開幕に先立ち、国際通貨基金(IMF)は2022年の世界経済の成長率見通しを3・6%(前回1月予測は4・4%)へ大幅に引き下げた。エネルギー、食料価格の一段の高騰が資源輸入国や途上国経済に大きな打撃を与えることが予想される中、本来であればG20が国際協調の道を探るべきだ。だが今回は、共同声明の採択が見送られた。機能不全を招いたのはロシアの責任である。
米国はロシアの参加に難色を示してきたが、G20には参加を拒否するルールはなく、議長国のインドネシアはロシアに招待状を出した。ロシアからはシルアノフ財務相がオンラインで参加して「ロシアへの制裁はインフレを一段と強め、経済への新たなリスクとなっている」と主張し、日米欧などの経済制裁を批判した。
インフレを抑えたいのであれば、すぐにウクライナから撤退すべきだ。ロシア代表団の発言の際、米国のイエレン財務長官やパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長のほか、英国、カナダの代表団などが退席したのは、ウクライナ侵略を正当化するロシアを決して容認しないとの姿勢を示したものであり、評価できる。
ロシアに同調する中国の姿勢も問題だ。オンラインで参加した中国の劉昆財政相は「世界経済を政治問題化したり、道具や武器にしたりすべきではない」と述べ、日米欧を牽制(けんせい)した。しかし、国際法に違反して他国を侵略し、民間人を虐殺するロシアが、G20のメンバーにふさわしいとは到底思えない。人権の尊重や法の支配などの価値観をないがしろにする中露両国の姿勢が表れていると言えよう。
対露制裁の実効性高めよ
一方、G20と共に開かれた日米欧の先進7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁会議では、経済制裁などロシアへの対応で結束を確認して「協力して制裁の抜け道を防ぐ」との声明を発表した。
中国などによる制裁破りが懸念される中、G7はロシアに軍事侵攻をやめさせるために結束して行動する姿勢を示した。世界経済の危機を招いているのが、ロシアの侵略である以上、西側諸国は対露包囲網を構築し、制裁の実効性を高めていく必要がある。