中国「都市封鎖」 人権軽視の「ゼロコロナ」強行

新型コロナウイルスの感染を徹底して抑え込む中国の「ゼロコロナ」政策が、国民の人権を大きく圧迫し、経済活動にも影を落としている。厳格な感染対策を成功させ、共産党独裁体制の優位性を示そうという政治的な意図を隠そうともしない。国民の命や健康は二の次である。


北京五輪以後に感染拡大

中国では2月の北京冬季五輪以後、新型コロナ感染が急拡大。上海ではロックダウン(都市封鎖)を実施して3週間経(た)ったが、新規感染者は1日当たり2万5000人近くで高止まり状況が続いている。ロックダウンは45都市に及んでいる。

陝西省の省都、西安市も今月16日に再封鎖されたが、2日から14日間で43人の市中感染者が出たことが理由だ。安徽省蕪湖市は陽性者を1人確認しただけで外出制限と全住民へのPCR検査を実施すると発表した。

新型コロナの発生源となった湖北省武漢市では、各地での流行を受け、スーパーや公共交通機関を利用するのにもPCR検査を義務付けた。上海では、市当局が国有の賃貸住宅を隔離施設とするために一部住民を退去させようとし、住民と警官との衝突騒ぎも起きている。住民の抗議は当然だろう。

習近平国家主席は、感染が拡大すれば責任を問うと明言しており、処罰を恐れて極端な感染対策に走る地方政府幹部が続出している。日常生活を圧迫するゼロコロナ政策に国民は怒りと不満を募らせているが、習政権は政策の堅持を強調している。

習氏は3月に開かれた共産党の会議で「わが国の経済発展と感染症対策は世界トップの地位を保ち、中国共産党と社会主義制度の顕著な優位性を十分に示した」と自画自賛している。今年秋、5年に一度の中国共産党大会で前代未聞の3期目に向かう習氏に、自身の威信に傷がつきかねない政策の転換は期待できないだろう。

しかしゼロコロナ自体、疫学的な妥当性に大きな疑問符がつく。陽性者の増加やワクチンの普及で抗体を獲得した人々が一定の割合に増え社会免疫を獲得するのが、感染収束の基本的な道筋だ。疑問の多い感染対策によって人権や経済活動に犠牲を強いられるのは、中国国民にとって大きな不幸だ。さらにそれが、人権抑圧を生み出す体制の宣伝のために行われるというのは二重の悲劇である。

今年「5・5%前後」の成長率を目標とする中国だが、国家統計局が発表した1~3月期の実質GDP(国内総生産)は、前年同期比4・8%増にとどまった。昨年10~12月期から上向いたが、ゼロコロナ政策が経済に与える悪影響は4月以降さらに拡大している。ロックダウンによる工場の操業停止などの影響が本格化するのは4月以降で、4~6月期のGDPの鈍化は避けられないとみられる。

経済発展に向け見直しを

世界企業のサプライチェーン(供給網)の要となっている中国でゼロコロナが続くことは、世界の経済にとっても好ましいことではない。中国政府は、科学的な常識と広い視野に立ってゼロコロナ政策を見直すべきである。人権軽視の社会体制からは、健全な経済の発展はない。

spot_img
Google Translate »