新型コロナウイルス対策に伴う折からの物価上昇にロシアによるウクライナ侵略が追い打ちをかけ、国民生活への経済的影響はさらに大きくなる見通しだ。政府は今月末に原油価格・物価高騰への緊急対策を打ち出すが、対露制裁に国際社会と結束して臨むとともに経済的困窮者への支援に取り組むべきだ。
1ドルが126円台に
物価の上昇は世界的な現象になっている。新型コロナの世界的流行から各国各種の経済支援で過剰に資金が供給された上、ワクチン接種の進展による経済活動再開は原油や原資材価格の急騰をもたらした。加えて、国際サプライチェーン(供給網)の立ち直りは追い付かず供給不安が生じるなどインフレをもたらす悪材料が重なった。
これら昨年来の経済状況によって、1月から小麦粉・パンなどの値上げが始まっている。2月の物価上昇率は0・6%で2020年2月以来の高い伸び率だったが、携帯料金値下げの影響を除くと2%に達する。
ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始した2月下旬にはさらに厳しさを増した。原油、天然ガスなどの資源大国であるロシアが第2次世界大戦後かつてない制裁を科された一方、小麦など穀物生産大国のウクライナの国土は無差別攻撃で破壊されつつある。
欧米など国際社会はエネルギーをはじめとする資源の対露依存からの脱却の方向を示してさらに原油高、資材高が進み、国内では3月以降も食品、飲料、日用品、電気、ガス、交通運賃などの値上げが相次いで発表されている。日本銀行が発表した3月の企業物価指数は9・5%の上昇で、1982年12月以来の高い伸びを記録した
ロシアとウクライナの停戦協議はウクライナ市民へのジェノサイド(集団虐殺)発覚で暗礁に乗り上げており、戦争は長期化する見通しだ。このため、当面の物価上昇傾向は避けられないだろう。まだコロナ禍による倒産、失業の打撃もあり、社会的弱者はじめ生活困窮者、学費を稼ぎながら大学に通う苦学生らへの対策が必要だ。
また原油高は漁船で操業する漁業、ハウス栽培などの農業、交通・運送業に必要な燃油高騰をもたらし、事業者を圧迫している。政府は現在、ガソリン1㍑当たり25円の補助金を支給する価格激変緩和対策を継続しているが、流通価格を抑え主に一般ドライバーに恩恵をもたらしている。並行して燃油高騰に苦しむ事業困窮者への支援を考えるべきであろう。
資源のほとんどを輸入に依存しているわが国が、国際的な資源価格の上昇で不利な状況になっているのが、円安の進行だ。1㌦が126円台になるのは2002年以来の約20年ぶりだ。
円安抑える金融政策を
米国が金融緩和政策の出口を開き利上げに踏み切った一方、日銀は大規模金融緩和を維持していることや、ロシアのウクライナ軍事侵攻により有事にドルが買われる傾向から円が下落している。
日銀は物価安定のため、物価高騰をもたらしている悪い円安の抑制を考慮した金融政策を検討すべきではないのか。