Homeオピニオン社説【社説】航行の自由作戦 日米は中国への警戒強化を

【社説】航行の自由作戦 日米は中国への警戒強化を

米海軍の空母USSミニッツと空母ロナルド・レーガン=2020年7月6日(UPI)

米国防総省が、米軍による2021会計年度版「航行の自由作戦」の報告書を発表した。

この作戦は、強引な海洋進出を強める中国への対抗手段だ。力による一方的な現状変更を許さないとの姿勢を示すことは、ウクライナを侵略するロシアへの圧力を高める上でも重要だと言える。

40年以上前から継続

対象期間は20年10月~21年9月で、日本を含む世界26カ国・地域で計37回の作戦が実施された。中国が最多の5回で、このうち南シナ海が4回、東シナ海が1回。台湾関連は1回だった。この中には、米海軍第7艦隊(神奈川県横須賀市)による対馬海峡付近での作戦も含まれているとみられる。

世界規模で展開する米軍は機動性確保を目的に、国際法に沿わないと見なす領海主張や航行制限がある海域で、沿岸国や地域に事前通告せず活動する航行の自由作戦を40年以上前から続けてきた。同盟国の日本にも等しく異議を唱えることで、ルールに基づく国際秩序を守る姿勢を強調し、東・南シナ海で覇権主義的な動きを強める中国を牽制(けんせい)する狙いもある。

中国は東シナ海に位置する沖縄県・尖閣諸島の領有権を一方的に主張し、尖閣周辺では中国海警船が領海侵入を繰り返している。フィリピンやベトナムなどと領有権を争う南シナ海では、人工島を造成してミサイルを配備するなど軍事拠点化を進めている。

さらに、中国の習近平国家主席は台湾統一を「歴史的任務」と位置付け、台湾に軍事的圧力を掛けている。ウクライナ危機を受け、中国が台湾侵攻に踏み切るとの懸念は高まっている。台湾有事は日本有事であり、日本は米国と共に警戒を強める必要がある。

 ウクライナ侵略の直後、国連安全保障理事会で侵略を非難し、即時撤退を求める米国主導の決議案が採決に付されたが、ロシアの拒否権行使で否決された。この際に中国は棄権し、ロシアに対する非難を避けた。

ウクライナ侵略は国際法違反である。中国も、オランダ・ハーグの仲裁裁判所が16年7月、南シナ海の領有権をめぐる中国の主張を退ける判決を下したにもかかわらず、判決を「紙くず」と呼んで無視する姿勢を続けている。中露両国は、民主主義国家が共有する「法の支配」の価値観をないがしろにし、平和を破壊している。

中国共産党内部では対露連帯の重要性を訴える学習会が開かれているもようだ。官製メディアは、ウクライナ情勢に関連して米国への批判を強めており、習氏の本音が「ロシア支持」であることを示唆している。中露の身勝手な行動を容認するわけにはいかない。

国際秩序への挑戦許すな

海上自衛隊の護衛艦は21年春から複数回にわたり、中国が南シナ海で造成した人工島などの近海を航行した。米国の航行の自由作戦と同様、中国の一方的な現状変更を牽制する狙いだ。

南シナ海では既に日米共同演習も行われている。日米同盟を強化し、国際秩序への挑戦を決して許さないとの姿勢を示し続ける必要がある。

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