【社説】露の原発攻撃 全人類への重大な背信行為

ウクライナ南東部ザポロジエの原子力発電所(同原発のフェイスブックより)

ウクライナ南東部にある欧州最大規模のザポロジエ原子力発電所がロシア軍の攻撃を受け、火災が発生した。原子炉は損傷せずに停止したが、爆発すれば大惨事を引き起こしていたに違いない。

原発への攻撃は言語道断で許し難い暴挙だ。全ての責任は、ウクライナに取り返しのつかない損害を与えようとするロシアのプーチン大統領にある。

「核テロに走った」と糾弾

ウクライナ当局は国際原子力機関(IAEA)に「重要施設」に影響は出ておらず、原発の放射線量の変化も報告されていないと説明した。ただ一部報道では、放射線量の上昇が確認されたとの情報が伝えられており、警戒が必要だ。

原発攻撃は悲惨な放射能被害を与えかねず、ウクライナ国民だけでなく全人類への重大な背信行為だ。ウクライナのゼレンスキー大統領が「原発施設に攻撃を加えたのは、(人類史上)ロシアだけだ。テロ国家は今や核テロに走った」と糾弾したのは当然である。

ザポロジエ原発は、ウクライナ国内の原子炉15基のうち6基が集中し、欧州最大規模だ。6基はいずれも旧ソ連が開発した加圧水型の軽水炉で、1986年に事故を起こしたウクライナのチェルノブイリ原発とは炉型が異なる。

チェルノブイリの事故では、ウクライナで350万人以上が影響を受け、このうち150万人が子供だった。事故後、がんの症例数が約20倍に増加したという。こうした悲惨な事故を二度と起こさないという国際社会の強い決意を、プーチン氏は踏みにじったのだ。ウクライナのクレバ外相は「もしザポロジエ原発が爆発すれば、チェルノブイリの10倍以上の規模となるだろう」としている。

国際社会からも強い批判の声が上がっている。岸田文雄首相はゼレンスキー氏との電話会談で、ロシア軍の原発攻撃について「最も強い言葉で非難する」と伝えた。先進7カ国(G7)の外相会合では、原発周辺への攻撃をやめるよう求めることで一致した。

ウクライナ侵略を受け、日米欧はロシアに対し、世界の銀行決済取引網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から一部のロシア銀行を排除する制裁を科す方針だ。いち早く制裁を発動した欧州連合(EU)は、ロシアの銀行7行を排除した。

しかし、ロシア最大手の国営ズベルバンクや国営天然ガス独占企業ガスプロム傘下のガスプロムバンクは排除の対象から外した。天然ガスをロシアに依存しているためだが、今回の非人道的な原発攻撃に対し、これらの銀行も排除する追加制裁を発動すべきだ。ロシアが一刻も早くウクライナから撤退するよう圧力を強めなければならない。

核使用に十分な警戒を

原発攻撃がロシアとウクライナとの2回目の停戦協議の直後に行われたことも、プーチン政権の卑劣さを示している。

プーチン氏は核戦力を「特別態勢」に移すよう命じた。今回の原発攻撃を踏まえれば、ロシアの核兵器使用も想定せざるを得ない。国際社会は十分に警戒する必要がある。

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