【社説】ウクライナ情勢 露の侵攻阻止へ各国は結束を


ウクライナ情勢が緊迫の度を増している。現状では、ロシアによる軍事侵攻がいつ行われてもおかしくない。先進7カ国(G7)をはじめとする国際社会は、ロシアに早期の軍部隊撤収を要求するとともに、侵攻した場合に備えて強力な制裁の準備を進めるべきだ。

18日、ウクライナで実施された軍事演習に参加したウクライナ軍兵士=同軍提供、場所は不明(AFP時事)

ハイブリッド戦を展開

ロシアはウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を阻止するため、ウクライナとの国境付近に10万人以上の軍部隊を集結させている。バイデン米大統領はロシアによる侵攻の可能性について「現時点でプーチン大統領は決断したと確信している」と述べた。

米メディアは米当局者の話として、ロシア軍の通常戦力の75%近くがウクライナ周辺に集結していると報じた。ウクライナとの国境までの60㌔圏内に120個大隊戦術群が展開しているという。米高官は、集結したロシア軍部隊の規模を最大19万人と見積もっている。

こうした状況の中、ロシアがウクライナを侵攻しないという条件で、バイデン氏とプーチン氏が会談を開催することで原則合意した。日米首脳による電話会談や、G7首脳によるオンライン会合も予定されている。

ロシアが侵攻すれば、ウクライナの首都キエフは2日以内に制圧され、最大5万人の市民が死傷して最大500万人の避難民が発生するとの予想も出ている。各国が結束し、侵攻を阻止しなければならない。

一方、ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力との紛争が続くウクライナ東部では、砲撃が続き、双方とも死者が出たと発表。親露派は「ウクライナ政府軍が侵攻を計画」と主張し、住民をロシアに避難させている。

親露派支配地域では車やガスパイプラインの爆発が相次ぎ、親露派はウクライナ側による「破壊工作」と決め付けた。ロシア捜査当局も、親露派住民が避難するロシア南部ロストフ州に向けてウクライナ側から砲撃があったと主張した。ロシアと親露派が連携し、侵攻の口実とするために破壊工作を自演しているとみていい。こうした動きは東部の停戦などを定めた「ミンスク合意」に違反するものだ。

プーチン氏は東部の状況を「ジェノサイド(集団虐殺)」と表現してウクライナ政府に対する反感をあおり、親露派への同情を促すような世論の醸成に躍起になっている。こうした軍事力と非軍事力を組み合わせたハイブリッド戦争は、2014年3月のウクライナ南部クリミア半島併合の際にも見られた。ロシアの動きはウクライナの主権をないがしろにするものであり、断じて容認できない。

資源調達先の多様化を

G7の緊急外相会合では、ロシアによるウクライナへの軍事的圧力は「国際秩序への挑戦」であり、ウクライナに侵攻した場合には金融・経済制裁を含めた「甚大な結果」を招くと警告する共同声明を発表した。

ロシア経済は既にクリミア併合に対する制裁で停滞しており、さらなる制裁が発動されれば大きな打撃となろう。制裁の効果を高めるには、ロシアの天然ガスに依存する欧州に調達先の多様化が求められる。

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