【社説】北京五輪と薬物 納得できぬ参加継続容認


北京冬季五輪に参加しているフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ選手(ロシア・オリンピック委員会=ROC)がドーピング違反による暫定資格停止処分を解除された問題で、スポーツ仲裁裁判所(CAS)が参加継続を認めたことが大きな波紋を呼んでいる。

ドーピングは競技の公平性だけでなく選手の健康も損なう。薬物に汚染された五輪は見たくない。

練習するフィギュアスケート女子のワリエワ=12日、北京(時事)

ロシア選手がドーピング

陽性反応を示したのは昨年12月に採取された検体。心臓の治療などに用いられ、持久力向上の効果があるとされる禁止薬物トリメタジジンが検出された。通常であれば2年から4年の資格停止処分となる。

参加継続を認めたCASは、16歳未満のワリエワ選手が世界反ドーピング機関(WADA)の規定で「保護対象者」になる上、出場を妨げることは「回復不可能な損害を与える」点などを考慮したとしている。しかし、年齢による特別扱いが許されるのか。CASの判断には納得できない。

15歳のワリエワ選手は今季、世界歴代最高得点を次々と更新し、北京五輪のフィギュア団体でも金メダル獲得の立役者となった主力選手だ。年齢を理由とした例外を認めれば今後も悪用されかねない。禁止薬物の陽性反応が出た選手は例外なく出場停止にすべきだ。

それにしても、ロシアのドーピング問題の根深さにはあきれるほかはない。ロシアは2014年ソチ冬季五輪で、検査のすり替えやデータの改竄(かいざん)など組織ぐるみの違反が発覚。今大会も潔白を証明できた選手が個人資格で参加している。ワリエワ選手の場合、検体採取から処理までに1カ月以上かかったことで混乱が大きくなった。

ロシアでは旧ソ連時代、共産党政権が西側諸国に対する優位性を示すためにスポーツを重視し、組織的なドーピングが横行した。ソ連崩壊後も歪(ゆが)んだ勝利至上主義は変わっていない。

だが薬物を使用した選手が金メダルを取ったところで、ただの茶番ではないか。ドーピングは、薬物などに一切頼らず、猛練習を積み重ねてきた選手たちへの冒涜(ぼうとく)である。

ドーピングは健康を害する恐れもある。今回のケースはワリエワ選手自身の意思とは考えられず、周囲の大人たちがドーピングを指示した可能性が高い。選手の健康を犠牲にして優秀な成績を収め、国威発揚を図ろうとすることは愚行以外の何物でもあるまい。WADAはコーチや医師らへの調査も徹底し、全容解明を急ぐ必要がある。

IOCは厳正な対処を

今回の問題の背景には、国際オリンピック委員会(IOC)のドーピングに対する甘さがある。WADAは16年リオデジャネイロ五輪からのロシア全選手排除を勧告したが、IOCは条件付きで出場を認めた。

スポーツ大国ロシアを締め出すことで五輪の価値が低下することを恐れているのであれば話にならない。ドーピングへの曖昧な姿勢を続ければ、それこそ「何のための五輪か」ということになろう。IOCの厳正な対処が求められる。

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