【社説】北朝鮮と中東 米国は脅威の高まりに対処を

30日、北朝鮮の国防科学院などにより行われた中長距離弾道ミサイル「火星12」の試射(朝鮮通信・時事)

台湾とウクライナの情勢が緊迫化する中、北朝鮮や中東地域でも米国の関与と影響力の低下が原因で緊張が高まっている。

ミサイル発射繰り返す

今年に入って北朝鮮のミサイル発射は既に7回を数え、その挑発ぶりは尋常ではない。変則軌道や低高度で飛翔する極超音速ミサイルや巡航ミサイルの開発を急ぎ、高度の高いロフテッド軌道での発射を試みるのは、日本や韓国のミサイル防衛システムの無力化を狙うものだ。

放置すれば日本の防衛体制は危殆(きたい)に瀕(ひん)する。北朝鮮のミサイル技術がロシアと類似していることや、国連安保理決議違反を重ねる北朝鮮を安保理常任理事国の中国が経済支援している事実も見落としてはならない。

さらに金正恩総書記は、米国の「敵視政策と軍事的脅威がもはや看過できない危険ライン」に達したと非難し、一時停止している核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射など「全ての活動の再稼働」検討を指示した。今後、さらなる挑発に出る危険もある。
北朝鮮が焦りを見せるのは、米朝交渉に進展が見えないからだ。

バイデン米政権は「調整された現実的アプローチ」と呼ぶ新たな対北政策をまとめ、前提をつけずに北朝鮮との話し合いに応じる方針を示した。だが、トランプ前政権のような首脳会談開催には消極的だ。そのため、首脳間の直接交渉で体制の存続保障と制裁解除を実現させたい北朝鮮は不満を募らせている。

中露への対応に追われるバイデン政権は北朝鮮問題に正面から取り組む余裕に乏しく、その意志もうかがえない。しかし、これでは北朝鮮の挑発が一層エスカレートし、国際社会の安全を脅かすことになる。バイデン政権の前向きな対応が必要だ。

一方、中東では核開発を梃子(てこ)にこの地域の覇権を目指すイランとサウジアラビアなど穏健アラブ諸国との対立が激しさを増している。イエメンでは、親イランの武装組織フーシ派と暫定政府を支援するサウジが主導する連合軍の戦闘で、多数の犠牲者が出ている。

トランプ前政権が離脱したイラン核合意の再構築を目指す交渉は昨年再開されたが、制裁解除を求めるイランと核開発規制の強化を目指す米国との対立で進展はなく、このままではイランの核開発が進むばかりだ。シリア内戦に軍事介入して以降、ロシアは中東での影響力を強めており、中国も武器供与の実施などで中東諸国に接近を図っている。イランはこの両国との関係を強化し、米国やイスラエルに対抗する動きを見せている。

影響力を強める中露

他方、アフガニスタンでイスラム主義組織タリバンの復権を許した米国は、イラクでも米軍を削減して過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦を打ち切ったため、イラクやシリアでISの活動が再び活発化している。後退する米国に代わり、今や中露が中東の支配権を握りつつある。中露に北朝鮮、イランが加わり強権的なユーラシアランドパワーの力は強まるばかりだ。グローバルな視点と規模で、この脅威に正面から対処する決意と努力がバイデン政権に強く求められる。

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