【社説】ウクライナ協議 ロシアの要求を跳ね返せ

ウクライナ

ウクライナ国境付近で軍を増強するロシアへの対応をめぐって米欧とロシアが協議を続けてきたが、主張の隔たりは埋まらず、解決の糸口は見つからなかった。ロシアは北大西洋条約機構(NATO)の東方不拡大を求め、加盟を目指すウクライナへの侵攻をちらつかせている。

しかし加盟に向けて動くことはウクライナの自由であり、妨げることは許されない。米欧はウクライナと共にロシアの理不尽な要求を跳ね返すべきだ。

NATO拡大に不満

協議はジュネーブでの米露の「戦略的安定対話」、ブリュッセルでの「NATO・ロシア理事会」、欧州安保協力機構(OSCE)の会合と続いた。米欧はウクライナを侵攻すれば「重大な代償と結果を招く」(シャーマン米国務副長官)と警告し、ロシアに部隊撤収を要求したが、ロシアは「自国の領内で演習を行っており、今後も行う」(リャプコフ外務次官)と強硬姿勢を崩さなかった。

ロシア側は各協議の終了後、記者会見で「NATO不拡大の法的保証は絶対に必要」との主張を展開した。旧ソ連構成国のウクライナとジョージア(グルジア)を「将来の加盟国」としたNATO首脳による2008年の宣言を今年6月の首脳会議で撤回するよう求めるなど、要求はエスカレート。外交交渉がまとまらない場合は「軍事技術的手段を用いてあらゆる措置を講じる」と脅しをかけた。

ロシアのプーチン政権は、ソ連に対抗するために創設されたNATOがソ連崩壊後も加盟国を増やしていることに、長年不満を抱いてきた。現在、ウクライナとの国境付近に10万人規模の軍隊を集結させ、米欧にNATO不拡大を迫っている。

だが、各国には自国の安全保障体制を選ぶ権利がある。ロシアがNATO拡大を嫌い、ウクライナの加盟を阻もうとするのは主権侵害に等しい。

これまでもロシアは、ウクライナの国家主権をないがしろにしてきた。親露派のヤヌコビッチ政権が崩壊した直後の14年3月にはウクライナ南部クリミア半島を併合。東部では何度か停戦合意が交わされたにもかかわらず、ロシアが後ろ盾となって支援する親露派武装勢力とウクライナ政府軍との間で武力衝突が続き、死者は1万3000人以上に上っている。自国の勢力圏を維持するため、他国の主権を侵すことは言語道断だ。

今回の一連の協議中、ロシア軍はウクライナ東部に近い4カ所の演習場で3000人規模の演習を開始。クリミア半島でも演習を行うなど揺さぶりをかけた。こうした挑発行為も断じて容認できない。

米欧は抑止に全力を

バイデン米大統領は昨年末のプーチン大統領との電話会談で、ロシアがウクライナに侵攻した場合には「経済的損失」を与えるほか、NATOの軍備増強やウクライナへのさらなる軍事支援で応じると伝えた。

一方、侵攻に対する米軍派遣は検討していないとしている。ロシアに足元を見られてはならない。バイデン氏は欧州との連携を強化し、米軍派遣の明言も含め対露抑止に全力を挙げる必要がある。

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