トップオピニオン論壇時評保守誌に与党の“狙撃手”登場

保守誌に与党の“狙撃手”登場

広がる李在明氏への拒否感
“司法リスク”抱え必死の李氏

韓国では尹錫悦大統領への弾劾が認められ、大統領選挙が行われる場合、最も大統領の席に近いのが野党共に民主党の李在明代表だと言われている。世論調査でも常に李氏がトップを走っている。

ところが、ここにきて尹大統領や与党の支持率が急騰し、野党と拮抗(きっこう)するまでになってきた。これは圧倒的に有利とみられてきた李氏への「拒否感」が広がってきているからだという。

「月刊朝鮮」(2月号)が“李在明狙撃手”の異名を取る与党国民の力の朴洙瑩(パク・スヨン)議員をインタビューした。「李在明が憲政史上最悪の国会をつくった」の記事だ。朴氏は李氏が京畿道知事の時、企画調整局長や行政第1副知事を務め、いわば李在明氏の“裏の裏”まで知り尽くしている人物である。

保守メディアが与党の“狙撃手”を登場させ、李氏を狙い撃ちするのは、敵将を倒してしまえば、敵軍は瓦解(がかい)する、という狙いからだろう。何となれば、この騒動の中心は尹錫悦大統領だが、根っこにいるのは李在明氏だとみているからだ。

李氏は“司法リスク”を抱えている。公職選挙法違反や北朝鮮への不法送金、自治体の法人カード流用など五つの裁判を抱えており、既に一審で有罪判決を受けたものもある。二審判決が出なければならないが、李氏側の遅延行動もあって裁判所はなかなか判決を出さないでいる。有罪が確定すれば大統領選挙に出ることはできないから、李氏側も必死なのだ。

だから、李氏と野党は強引な手段も厭(いと)わない。その最たるものが、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)が主導した内乱罪容疑での尹大統領逮捕だ。朴洙瑩氏は「手柄を焦る公捜処が権限のない捜査を行い、本来逮捕状を発給できないソウル西部地方裁判所を使って出させた便法だ」と批判する。

この公捜処は、民主党が21代国会(2022年5月招集)で数に任せて強引に法律を通してつくった組織である。しかし「これまでに高位公職者の捜査は1件も成功しなかった」(朴氏)と言う。ここで大物を釣り上げておかなければ組織の存続に関わるとの判断があったわけだ。

問題なのは、それでは公捜処は野党の意を受けて尹氏逮捕に動いたのか、という点だ。必ずしもそうではない。司法は「法律に則(のっと)っている」とあくまでも不偏不党を主張する。しかし、韓国では司法といえども国民感情を無視して杓子(しゃくし)定規に法を適用するわけではない。大衆の動向に左右される。公捜処としても、その時の圧倒的な尹氏弾劾支持の世論を見て動いたのだろう。

一方、ソウル西部地裁はいわば“左派の巣窟”だ。左派系の「ウリ法研究会」出身判事が多く、公捜処が本来逮捕状を請求すべきソウル中央地裁を避け、西部地裁にした理由はここにある。中央地裁に出せば退けられた可能性があったからだ。

ところが、風向きが変わってきた。前述したように尹氏と与党の支持率が上がってきたのだ。保守派のデモは釜山、大邱などで数万を数えるまでに膨れ上がっている。左派のデモが労組や教組の組織動員なのに対して、保守派は左派ほどには組織立ったものではない。「左派政権になっては大韓民国が滅ぶ」「李在明だけはダメだ」という自発的な集まりだ。

裁判所としても、こうした世論の動向には敏感にならざるを得ない。特に西部地裁への乱入事件では逮捕状を発給した判事を狙ったものだったことが分かり、司法界に衝撃を与えた。「判事が狙われる」ということが現実味を帯びているのだ。

さて、朴氏の李氏評だが、朴氏は数々の煮え湯を飲まされた経験を述べ、「李氏はウソつきだ」とまで言い切る。そうすると、ここにきての李氏の「親日」発言など全く信用できないことになる。

朴氏は新しい未来民主党の田炳憲(チョン・ビョンホン)代表の言葉を紹介した。田氏は李在明氏が「大統領になれば、粛清劇を行う総統体制になるだろう」と警告したという。また「(李氏は)ブレーキなしで走っている。(李氏が大統領になれば)大韓民国の自由民主主義と市場経済体制は完全に没落するだろう」と警告した。

この朴洙瑩氏のインタビュー記事は韓国民にどう受け止められるだろうか。

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