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偏執的で自己陶酔的な性格 心理学者が分析した尹氏の行動

12月3日、 非常戒厳を宣言する韓国の尹錫悦大統領=ソウル (大統領府提供) (AFP時事)
12月3日、 非常戒厳を宣言する韓国の尹錫悦大統領=ソウル (大統領府提供) (AFP時事)

緻密な事前分析や準備が不足

昨年12月、韓国の尹錫悦大統領は非常戒厳を発令してわずか6時間でそれを引っ込めた。誰もが抱く疑問が「なぜ、そのような行動を取ったのか」だ。野党の弾劾連発と徹底した国会運営妨害があったとしても、「なぜ戒厳という極端な手段なのか」の疑問は残る。

この時の大統領の心理状態に関心が集まっている。月刊朝鮮(1月号)は「深層分析」として3人の心理学者に尹大統領を分析させた。

記事の冒頭、独ハンブルク大学のヴェルナー・ザッセ名誉教授のコメントを同誌は載せている。曰(いわ)く「大統領は監獄でなく病院に行かなければならない。私が見るに彼は心が病んでいる人」だと。

これは「むしろ病んでいてほしい」という気持ちが込められているようにも見える。心神耗弱だった方がまだ情状酌量の余地があるが、正気で行ったとすれば、尹大統領にはどこか“壊れている”部分があったのではないか。納得できる理由を探りたいという心理に答える企画なわけだ。

最初に登場したのは「精神分析学的政治・社会理論を専攻して米メリーランド州立大学で政治哲学博士学位を受けた金容新(キムヨンシン)壇国大客員教授」だ。金教授は尹大統領の病理的性格を「偏執的類型と自己陶酔的類型が混ざっている」と分析した。偏執的性格は「全ての事態や人物を白か黒かの二分法で区別する傾向を示す」という。つまり尹大統領は「敵か味方か」「支持者か反対者か」で周りを見ていたのだ。

また、自己陶酔的性格は「指導者が最も多く持っている性格的特徴」として、「自身が導く構成員を愛さないながらも、自分はみんなに愛されることを望み、賛辞を送る構成員だけを認めて、批判を容認せず、服従することを望む」という。

確かに、尹大統領の当時の心理状態は明らかに客観情勢を見失い、特定の情報だけを耳に入れ、周囲にはイエスマンしかいなかった、と韓国メディアは報じている。

金教授は「自分の話ならばすべての計画が一瀉(いっしゃ)千里で実行されるという慢心を抱いていた」とし、緻密な事前分析や準備ができていなかったと指摘した。さらに「自分の誤りを理解できず、誤りの認知ができる人ならば、最初からそのようなことはしない」と厳しい分析をしている。

既に起こった事実からもそれは分かる。恐らく憲法裁判所で行われる弾劾審理でも、自分の正当性を強く主張し続けるだろう。

「蔚山大医学部、ソウル峨山病院精神健康医学科名誉教授の金昌潤(キムチャンユン)教授」は、尹大統領を「マイウェイ型、内向的で直感的」とし、「自身の主観的な考えが第三者にどう映るかに関心がない」と言う。検事時代の先輩が尹氏を評して「ファクトをベースに置くべきなのに、見込み捜査をして、事実関係に基づいた考え方をしない」といった例を挙げている。

それに、やはり自己陶酔的傾向を指摘しており、「病的ナルシシズムではないが、内向的な人は内的優越感を表す傾向があり、『私は違う』ということ」とし、医学部定員増員問題でも「私は違う。以前の政府とは違う」として対抗したことを挙げている。

戒厳宣言についても「私は違う。根本的解決をする。対策がないと言ってじっとしてはいない。何としてもする」という式の行動だったと指摘した。

最後に黄相旻(ファンサンミン)博士。「ソウル大心理学科を卒業、ハーバード大大学院で心理学博士学位を取得、同大サイエンスセンターとカリフォルニア大で研究活動をし延世大教授を歴任」という経歴だ。

黄教授は尹氏をヒューマニストだとし「複雑微妙な状況の変化や他人の感情を把握するのが下手な人」で、「権威と序列を重要だと考える。また瞬発力に優れ、新しい知識の習得力や理解力は早いがガタガタ揺れる」「予測できない失敗をする」などと分析している。

記事をまとめた同誌の記者は「3人の診断は全部意味がある」と感じ、一連の政治的事件によって韓国人は「心的外傷後ストレス障害(PTSD)を体験しており、一日も早く日常に帰りたい」と思っていると記した。しばらくの間、韓国メディアには心理分析が続きそうだ。

(岩崎 哲)

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