両国が難しい時代をリード

激動の世界の中、日本の政治家たちに党利党略・私利私欲のため、お互いの足を引っ張り合う余裕があるのだろうか。国民の信頼を失わせているのを与党自民党だけのせいにできるのか。糸の切れた凧(たこ)のように離合集散してきた野党の先生方が結集して脆(もろ)いモザイク的な政権ができたとしても、この厳しい国際情勢を乗り越えられるのだろうか。
◇党利党略を捨てよ
今こそ、日本ならではのサムライ精神に則(のっと)り、党利党略・私利私欲を捨てて、日本国の国益のためにそして日本がアジアの安定と世界の平和のために結集する必要があるのではないだろうか。民主主義の制度と精神に則り、国民が第1党として選んだ自由民主党、そしてその政党が民主的に選んだ総裁に協力し、少なくとも2、3年の余裕を与え、日本国が一致団結して前進することが必要である。私は日本初の女性首相になる可能性の高い高市早苗氏に公平なチャンスを与えるべきではないかと考える。日本のマスコミも慣例通りハネムーン期間を守り、批判的な材料を集めるよりも、いかにして日本初の女性総理大臣が日本国および世界に貢献できるかを見極める必要がある。
私が知っている限り、世界初の女性首相であるスリランカのシリマヴォ・バンダラナイケ氏、そしてインドのインディラ・ガンディー氏は、それなりの功績を残し、長期政権を運営してきた。従って、私は高市早苗首相誕生を前提にして、今私たちが戦後模範としてきたアメリカが、トランプ政権下で不確実な航路でさまよっている中、世界最大の民主主義国家・インド、アジアでもっとも成熟した民主国家・日本が、互いに協力しこの難しい時代をリードするチャンスと義務が訪れているという認識の下、以下のことを述べたい。
高市早苗氏の首相就任が現実味を帯びてきたことは、日本にとって歴史的な節目であると同時に、インド・日本関係にとっても大きな前進を意味している。高市氏は、故安倍晋三元首相の薫陶を受けた政治家として広く知られており、安倍氏が掲げた「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンは、日本の外交政策を再定義し、インドとの関係を長期的に変化させた。
安倍氏とナレンドラ・モディ首相との間の強い信頼関係は、両国関係を経済中心から真に戦略的な次元へと引き上げた。今問われているのは、高市氏がその遺産を継承し発展させられるか、そしてインドが地政学的な不確実性の中で志を同じくするパートナーと協力する好機を活(い)かせるかという点である。
◇二つの海の交わり
安倍氏の遺産は、両国関係を築く上での確固たる基盤となっている。安倍氏は多くの指導者に先んじて、民主的で経済的に躍進するインドの存在がインド太平洋の均衡に不可欠であると理解していた。2007年インド国会で行われた有名な「二つの海の交わり」演説は、インド太平洋戦略の知的基盤を築いた。
第2次政権期には、日本のインドへの経済的関与が飛躍的に拡大し、ムンバイ―アーメダバード間の新幹線計画や、各都市の地下鉄整備、産業回廊への投資などが進展した。さらに重要なのは、安全保障協力が関係の中核に据えられたことである。20年の物品役務相互提供協定の締結や定期的な海軍演習は、両国間の戦略的信頼を象徴している。
高市氏は、安倍氏の世界観を継承する姿勢を明確にしている。強固な防衛体制の構築、日米同盟の重視、重要サプライチェーン(供給網)の安全確保への取り組みは、いずれもインドとのより深い連携を志向する論理と一致しており、インドにとってこれは歓迎すべき展開である。国境や地域でますます強硬化する中国への対応を迫られる中、経済協力と安全保障協力を両立できる東京のパートナーを得ることは、インドの戦略的な選択肢を広げることになる。
経済・安保の両面で協力拡大へ
両国の協力拡大の余地は大きい。経済面では、日本が供給網の多角化とエネルギー転換を進める中、インドは技術・資本・高品質インフラを必要としている。日本の投資は「メイド・イン・インディア」政策を後押しし、半導体やレアアース処理などの分野での協働は、両国の関係を単なるプロジェクト型から未来志向型へと進化させる可能性を持つ。また、重要技術分野の国際基準づくりや、オープンなデジタル秩序の維持でも利害は一致している。
安全保障面でも協調を深める理由は十分にある。日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」は、海洋監視や気候レジリエンスなど実務的協力の場として成熟してきた。日本がこの枠組みへの関与を継続し、インドの能力強化に向けて防衛技術協力や共同演習に積極的であれば、インド太平洋を「力による現状変更」ではなく「ルールに基づく秩序」で支配される空間として確立する助けとなる。
インド・日本の結束強化に対する中国の反応も無視できない。中国政府は伝統的に、両国の戦略的協調を「封じ込め戦略」の一環と見なしてきた。米中対立が激化する中、インドと日本は一方的な攻勢を抑止しつつも、露骨な「反中同盟」として行動の自由を狭めないよう協調する必要がある。
◇戦略的利益が一致
それでも、慎重な楽観を抱く理由はある。現在のインドと日本の戦略的利益の一致は、近代史上かつてないほど深い。安倍氏のビジョンを継承し、インドとの関係を優先する日本の首相が誕生すれば、このパートナーシップは新たな推進力を得るだろう。インドにとっても、日本を自国の発展と安全保障戦略の中核に据える好機である。インドが実行力を示し、日本が国内制約を克服できれば、両国は協力して安定かつ繁栄するインド太平洋を形づくることができる。
22年に安倍氏が急逝したことで、インド・日本関係を地域安定の礎として制度化するという課題は未完のままとなった。高市政権の誕生は、その事業を継承する機会をもたらす。現実的な視野と政治的意思をもって育まれるならば、このパートナーシップは今後10年のインド太平洋の戦略地図を決定付ける可能性がある。





