前米大統領にして共和党大統領候補でもあるドナルド・トランプ氏に対し、2回も暗殺未遂事件が起こった。いずれも極めて不自然な事件であった。この問題を分析し、現代アメリカの分断と闇について考えてみたい。
7月13日、ペンシルベニア州で開かれた選挙集会で、トランプ氏は約130メートルの距離から狙撃され、耳を負傷した。パネルに投影された資料を見るため、ふと首を曲げたために奇跡的に助かった。助かる確率は2万分の1だったという。
犯人はクルックスという20歳の青年で、その場で大統領警護隊(シークレットサービス)の狙撃手に射殺された。本来共和党支持者だったが、トランプ氏の政策に不満を持っていたという。その時の状況には、不自然な部分が幾つもあった。
まず世界中に配信された動画を見ても、女性の警護官が多過ぎる。女性だから優秀でないというわけではない。しかし女性は平均して身長が低い。警護官は自らを盾にして、警護対象は守らねばならない。身長190センチのトランプ氏を守るためには、身長が十分でなかったことは、あの動画を見ても明らかである。
シークレットサービスはバイデン政権になってから、多様性政策を非常に強化した。そのため女性の警護官も多く、またLGBTの警護官も増やしていたという。そのため米軍が直面しているのと同じ問題――女性やLGBTの人々と男性とが共に働く難しさに直面し、シークレットサービスの士気を低下させていたのではないか。
実際シークレットサービスは最近、人材難や訓練不足に悩んでいるという。
このような多様性政策を推進した当時のシークレットサービスの女性長官は、議会の追及により辞任に追い込まれた。しかし解任でなく辞任であり、その後に現場責任者だったとも言われる副長官が昇進した。このような不透明な人事が、ますますシークレットサービスの士気を低下させたのではないか。そのため元シークレットサービス警護官で、ラジオ司会者でもあるボンジーノ氏は、第二の事件が起こることを予測していた。他にも不自然な点は幾つもあった。
米連邦捜査局(FBI)は、事件現場を3日後に清掃し、犯人の遺体を10日後に火葬にした。これでは証拠はメチャメチャである。
当日はベテランの警護官が、すべて休暇を取っており、トランプ氏を警護していたのは、警護の専門家ではない人々が多かったという。シークレットサービスの狙撃隊が現場に派遣されたのも、この日が初めてだったという。
それらの人々の行動に、シークレットサービス上層部が、制限を加えていたという情報さえある。特に狙撃隊は、犯人を数分前に発見していたにもかかわらず、トランプ氏が銃撃されるまで、ライフルを発射できなかった。地元警察との協力関係にも問題があった。無線の共有さえ不十分だったという。犯人が潜んでいた建物の管理なども、どちらの責任かが曖昧なままだった。
トランプ氏陣営は、トランプ氏の警護官が少な過ぎるとして、増員をシークレットサービスに依頼していた。現場のシークレットサービス警護官たちも、同様のことを上層部に進言していた。しかしトランプ氏の警護官が増員されることはなかった。
不自然な2度の事件 接近なぜ可能 警護も不十分
7月の事件の後、警護官は増員されたという情報もある。しかし、ボンジーノ氏の予測通り第二の事件が起こった。9月15日、フロリダ州にある自ら所有するゴルフ場で、ゴルフをプレーしていたトランプ氏は、約300メートル離れた距離から狙撃されそうになった。シークレットサービス警護官が犯人に気が付いて発砲し、犯人は逃走。その後に逮捕された。
犯人はハワイ在住のラウスという人物で、2016年にはトランプ氏に投票したと言われているが、その後は民主党に複数回の寄付を行ったという情報もある。ラウスは強固なウクライナ・シンパで、そのためウクライナ戦争和平論者であるトランプ氏を憎んでいたという。
彼はウクライナで外国人志願兵の募集を行っていた。そのような活動はテロリストと接触する可能性が低くないものである。アメリカ政府が一度は極右勢力として疑った、アゾフ連隊との関係もあったのではないか。
そのような人物がウクライナから帰国すれば、テロ対策と出入国管理を担当する国土安全保障省が、厳しい調査を行うのが通常である。しかし、なぜか国土安全保障省は、ラウスに関する調査を拒否したと言われている。
またラウスは、大量破壊武器携帯の容疑で、逮捕された前歴もある。そのような人物は、飛行機の国内便にさえ、搭乗するのが難しいはずなのである。
そもそもラウスは、なぜトランプ氏に接近できたのだろうか。7月13日の事件があったのだから、ゴルフ場の警護も厳しくなければいけなかったはずである。
当日のトランプ氏のゴルフのプレーは、急に決まったもののようである。そうであればラウスは、なぜトランプ氏がゴルフ場にいることが分かったのだろうか。内通者がいたのだろうか。それがシークレットサービスに、分からなかったのだろうか。
ラウスは12時間もゴルフ場の近くで、待機していたという情報もある。そうであれば、なおさらシークレットサービスは気が付かなければおかしかったはずである。
バイデン大統領は7月の事件の後も、9月の事件の後も、トランプ氏への警護強化を指示している。しかし、こうしてみるとバイデン政権のシークレットサービスは、トランプ氏を本気で守ろうとしているとは思えない。
2020年の大統領選挙では、大掛かりな不正が疑われた。そうして大統領になったバイデン氏の下で、ウクライナやガザの戦争が発生した。それだけ兵器産業が儲(もう)かった。トランプ政権時代には、大掛かりな戦争はなかった。
トランプ政権で行われた医療費透明化政策を、バイデン政権は覆した。そのため米国民の半分が、医療費が上がったと考えている。つまり製薬会社が儲かったのである。
トランプ政権では減税という形で、国民の手にお金を戻した。バイデン政権は補助金という形で、大企業にお金を回した。そのため8兆ドル近い赤字が累積した。それはインフレの原因となり、アメリカ国民を苦しめている。
そのため日本で報道されているのとは違い、独立系世論調査機関の調査によれば、むしろトランプ氏の支持率は、ハリス副大統領を大きく上回っているという数字もある。特に本来は民主党支持であるはずの、ヒスパニック系や黒人そして労働者階級からの支持が上がっているのである。このような人々と民主党を支持する兵器会社、製薬会社その他の大企業のエリートとの間で、アメリカの分断が深まっているのである。
こうしてみるとバイデン政権は、アメリカの分断と闇の象徴のようにも思われる。中低度所得者を助けることで分断と闇を解消しようとして戦っている、トランプ氏に消えてもらいたいと思っていても不思議ではない。そのように考えなければ、2回の暗殺未遂事件の不自然さは、理解できないように思われる。
なお11月8日に、グローバル・イシューズ総合研究所と一般財団法人尾崎行雄記念財団との共催で、ロバート・エルドリッヂ、ケント・ギルバート、松本佐保の各氏と私の4人で、このようなアメリカの分断と闇について考えるシンポジウムを開催する予定である。ご興味のある方は、10月中旬以降に尾崎行雄記念財団のホームページでご確認の上、ご参加いただければ幸いと思う。
(この記事の文責の一切は私にあり、シンポジウムのパネリストたちの意見とは言えないことを申し添えておく)