サンデー編集長 佐野 富成
いよいよパリオリンピック(五輪)が開幕した。7月26日(日本時間27日)~8月11日まで世界のトップアスリートたちが日ごろから磨(みが)き、鍛えた技を披露する時だ。サンデー世界日報では、日本のメダル数を40個とし、金メダルを15個獲得すると予想した。これ以上のメダルの獲得なら嬉(うれ)しい限りだ。
1980年代以前のオリンピックは、アマチュア選手が集う大会の頂点として君臨していた。しかし、84年の米ロサンゼルス五輪から一部の競技でプロ選手も参加することが可能になった。以降、大会ごとにバレーボール、柔道、陸上などプロ選手が出場し活躍するようになった。
一部の社会主義国家は、国家が育成し、メダルを取れば一生の生活に困らないほどの権利が与えられる国家プロとなった。
資本主義国家では、メダルを取れば、著名な企業スポンサーが付き、引退後は実業家になることもできるプロ選手となった。
実は日本は、アマチュアの他に国が支援する国家プロや民間企業がスポンサーとなったプロ選手、そして企業の会社員として企業からお金(サラリー)をもらって活動するノンプロ選手も存在する。
日本のアマチュア選手の多くは、高校生や大学生、または大学の職員という傾向にある。
日本のメダリストが世界のメダリストとの違いを示すエピソードがある。
オリンピックでメダルを獲得した日本人選手が海外遠征費を自ら賄っていると聞いた海外選手は「信じられない」という言葉が返ってきたという。
今も、この状況が変わっていない種目もあるという。
それでも、今やスポンサーと言われる支援企業が付けば、少なくとも遠征費に事欠くことがなくなった日本。強くなれば強くなるほどアスリートにとって安心して競技に打ち込めるというもの。
バレーボール男女日本代表は、海外遠征を行う時の飛行機移動をエコノミークラスからビジネスクラスに移したところ成績が上がったという。
男子サッカーの元日本代表・高原直泰さんがエコノミークラス症候群を患った時、時の代表監督から「高原をビジネスかファーストクラスで遠征させたい」と言ったことがあるが、今やアジア最強とも言える日本も2000年代前半はエコノミーで移動していた時期もあった。
選手を酷使した時代もあったが、五輪といった国際大会で活躍する選手たちを見ると嬉しく、明るい気持ちになる。
だからあえて思うのだが、現在アマチュアスポーツの最高峰は、やはり五輪なのかという疑問だ。
「各競技のトップアスリートが集う場所それが五輪であるべきだ」
国際オリンピック委員会(IOC)では、各競技のトップアスリートが集う場所、真剣に戦うことで育まれる友情とその行為の美しさを次につなげてほしい、という願いが込められているように思える。だからこそ五輪に出場した時点でアマもプロも関係ない。
今回のパリ五輪は、これまでと違い、スポーツもアート、芸術の一つとも言えることが実感できるのでは無いだろうか。世界遺産を背景にトップアスリート同士のぶつかり合い、これもまた芸術でもある。
古代ギリシャの彫像、ミュロンの「円盤を投げる人」のように。