共同通信社が1月13、14日に実施した世論調査では、政治資金規正法の厳格化や厳罰化を必要だとする意見は86・6%に達した。裏金処理自体が違法なのだから、このような世論は当然である。が、同時に自民党の派閥について、解消すべきだとする意見は、どちらかというと解消すべきだという意見を含めると80・2%に達した。
派閥解消については菅義偉前首相の強力な意見もあるが、先のような世論に押されて、首相が宏池会の解散を表明し、二階派や安倍派では十分に冷静で客観的な審議もないままに派閥解散の結論を出した。が、将来を考えて、それで大丈夫なのか。
現在、衆議院、参議院には350人を超える自民党員がいる。これだけの所属議員のいる党で、派閥がなくして、議員の研修、研鑚、及び政策研究は効果的に進めることができるのだろうか。
このように見れば、派閥の存在の是非の問題は今回の政治資金パーティー裏金問題と切り離して議論しなければならない問題だということになる。
政治刷新本部としては、政治資金不記載を徹底的に排することの確認が第一であるが、併せて今回の裏金問題は不正な政治資金取得とは違うことを国民によく説得する場にしなければならないのではないか。そのことによって、この事件が出てきた時の、初期の岸田首相の誤った判断を確認し是正することが必要だ。
加えて、「政治刷新本部」という名称が全ての党派に通じることを幸いとして、禍を転じて福となすようにしたらどうか。全ての国会議員が研修、研鑚、政策研究に邁進するにはどうすればよいのかなど、熱を込めて検討したらどうか。
例えば、与党としては全ての案件に党議拘束をかけるのは原則であるが、党議拘束を外してもよい案件もあり、党議拘束を外すための手続きを自民党内につくるべきではないか。
昨年6月のいわゆるLGBT法制定の際には、自民党内の合同会議では反対論者が多かったにもかかわらず、LGBT法制定が党の方針になり、反対論が多数いながら制定となった。もし、党議拘束を外すための手続きがあれば、その手続きが取られたであろう。そうすれば、自民党議員は一人一人賛否の立場の選択を迫られるわけだから、それだけでも議員としての政策研究は熱心に行わなければならなくなる。
もっとも、岸田首相としては党総裁として、さらには総理として、自民党に党議拘束をかけなければならない時があることも確認しておかなければならない。総理というのは国民の生命、財産を守る行政府の最高の責任者であるから、場合によっては、自民党をも超越して、党の決定に反しても違ったことを決定しなければならない時がある。そのことを前提としながら、自民党内に党議拘束を外すための手続きを整備するようなことを、この「政治刷新本部」で検討し、その手続きを定めることを確認すれば極めて生産的である。
さらに言えることは、国会が政策を競う審議の場として活性化するため、例えば、政党の幹事長あたりが出て、対政府の質疑ではなく、党間で各党の政策に対して質疑を行うようにしたらどうか。政党間で政策研究は大いに磨かざるを得なくなり、国会での議論は十分に熱を帯びてくるのではないか。そうすれば、これまでの国会とは全く違った雰囲気のものになるのではないか。
そのようなことを審議すれば、国民のための政治刷新になり、まさに禍を転じて福となすことになる。そんな本質的な刷新論議を全く省いたまま、早くも中間取りまとめを行うというのは、あまりにも拙速だ。