日本揺るがす首相の判断の誤り(上)公正でない安倍派閣僚更迭

元武蔵野女子大学(現武蔵野大学)教授 杉原誠四郎

衆院予算委員会の冒頭、自民党5派閥の政治 資金パーティー収入の過少記載問題について 発言する岸田文雄首相(左手前)=2023年11月22日午前、 国会内

岸田文雄首相には連続する判断の誤りがあり、日本をして不必要に混乱に陥れている。そして自民党をして故なく混乱に陥れている。

今、問題の政治資金パーティーの裏金問題でも大変な判断の誤りを犯した。

自民党の派閥が政治資金パーティーで集めたお金の一部を不記載にして裏金にしたのは、政治資金規正法に違反することだから、検察が捜査に入るのは当然だ。昨年11月、東京地検特捜部の捜査が公になった。

すぎはら・せいしろう 1941年広島県生まれ。67年東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。城西大学、武蔵野女子大学(現武蔵野大学)教授を歴任。著書に『法学の基礎理論 その法治主義構造』『新教育基本法の意義と本質』『理想の政教分離規定と憲法改正』など。共著に『吉田茂という病』など。

が、この政治資金パーティー裏金問題は、不正に政治資金を集めたものではない。違法でない状態で集めた資金に不記載で処理されたものがあり、その点で違法だったものだ。だから特捜部の捜査を受けるのは当然であるが、岸田総裁としては、他の政治資金の違法問題との違いをはっきり指摘して、それで自民党として、違法行為を止めるよう党内に明確な指示を出し、捜査に全面的に協力するよう訴えるべきであった。そして自らが率いていた宏池会では、自ら徹底的調査をして結果を公表すべきであった。

しかるに派閥の規模からして最も巨額の裏金をつくった安倍派(清和政策研究会)の捜査に注目が集まると、この裏金疑惑との個人的責任の関係が必ずしも十分に明らかでない時点において、安倍派からの閣僚4人の首を切った。すなわち昨年12月14日の、松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、鈴木淳司総務相、宮下一郎農林水産相の更迭である。

これらの閣僚が安倍派に属していたことは確かだが、安倍派が決定して指名し内閣に送り込んだ閣僚ではない。国民のための政治に最も貢献しうるとして、それゆえに岸田首相自身が選んだ閣僚ではなかったか。少なくとも今回の裏金問題で、個人的な責任が明らかとなるまでは、内閣の人事と派の裏金問題とは関係ないこととして説明し、閣僚更迭の問題とすべきではなかった。少なくとも直ちに結びつけるべきではなかった。

岸田首相は判断を誤り、この裏金問題を本来問題でない領域にまで拡大し、自民党を不当に混乱に陥れ、不当に政治の不信を招くところに展開してしまった。

18日には、首相本人の属していた宏池会に3年間で3000万円の裏金があり、立件されることが明らかになった。安倍派で裏金問題が出てきたとき、安倍派の幹部でなかった閣僚まで首を切ったことからすれば、宏池会から出た閣僚も首を切らなくてはならないということになる。とすれば当時、派閥会長だった岸田首相自身も総理を辞めなければならなくなる。このような苦境に立たされた岸田首相はこのことに国民の目が集まるのを回避しようとしてか、この日の夕刻、宏池会を解散すると発言をした。そしてそれに連鎖反応をするかのように、19日、安倍派(清和会)と二階派(志帥会)が解散を決定した。

岸田首相はこれに先立つ11日、自民党総裁として、裏金問題の再発防止策などを検討するため党内に自身を本部長とする「政治刷新本部」を設置。そこで「国民の信頼を回復し、民主主義を守るために自民党は変わらなければならない」と述べた。が、違法な政治資金の取得と区別のついていない今回の裏金問題の悪しき印象のままで健全な正しい結論が出るのであろうか。さらには、十分な議論もなく派閥を解散するなど、本来あってよかったことであろうか。冷静に考えれば、現時点は派閥の存否の議論や、ましてや解散を決定する時ではなかったのではないか。

すぎはら・せいしろう 1941年広島県生まれ。67年東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。城西大学、武蔵野女子大学(現武蔵野大学)教授を歴任。著書に『法学の基礎理論 その法治主義構造』『新教育基本法の意義と本質』『理想の政教分離規定と憲法改正』など。共著に『吉田茂という病』など。

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