マイク・ポンペオ前米国務長官は、増大する中国の脅威から自由世界を守るには、日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」を強化することが重要だとする論考を世界日報に寄せた。

中国共産党(CCP)が最近、「対外関係法」を可決、成立させたことは、中国が「自由で開かれたインド太平洋」を守ろうとする自由主義国家に対する脅威であることを浮き彫りにしている。
この新法によって、習近平国家主席が自らの利益を脅かすと考えた行動に対する「対抗措置」が強化され、平和、安定、自由の維持を望む国々に対抗して、CCP中心、CCP主導の秩序を確立するという習氏の目標達成がさらに近づくことになる。
トランプ前米政権は4年間、日本、インド、オーストラリアと協力し、「クアッド」を再活性化させることで、CCPの脅威を抑え込んできた。CCPの野心に対抗し、真に自由で開かれたインド太平洋を維持するためにクアッドのような取り組みが一層重要となっている。
冷戦終結後、多国間主義を自国のためだけに追求するという厄介な傾向が生まれた。これがどのような結果を生むかは予測可能だった。つまり、世界保健機関(WHO)や国連安全保障理事会のような国際機関は、当初は共通の利益と目的のために設立されたものの、自由主義国家に敵対する国々に悪用されるようになってしまった。
例えば、中国はWHOでの権力を利用して、新型コロナウイルスを世界に解き放った責任を隠蔽(いんぺい)した。ロシアは、主権国家に対して侵略戦争を行っているにもかかわらず、国連安保理の議長国だった。これらの問題は、極めて重要なことを示唆している。私たちの価値観を共有せず、私たちの利益に反する国々に対しては、多国間の合意や機関による抑制を期待できないということだ。
このような現状を見て、多国間主義は無意味だと結論付ける人もいるかもしれないが、トランプ政権の見方は違っていた。私たちは、協力関係が非常に重要であることを知っていたが、一方で、宗教、言論、良心の自由に裏打ちされた人権などの、米国の共通の利益や価値観を共有する国々と力を合わせた場合にのみ機能することも知っていた。こうして新生クアッドが誕生した。
クアッドは、粘り強さと創造性の賜物(たまもの)だ。まず、2007年に発足したものの、さまざまな面で対立があり、能力を発揮することはできなかった。17年、安倍晋三首相がその可能性に気付き、状況は一変した。クアッドの父と呼ばれるにふさわしい安倍氏は、トランプ政権と共に、クアッドを習氏とCCPに立ち向かうための重要な新たな枠組みとして復活させた。
幸いなことに、オーストラリアのモリソン首相やインドのモディ首相という、私たちと協力する準備ができている素晴らしい指導者に恵まれた。クアッドの結成によって、民主主義が、共通の利益を有する自由な諸国民を結び付ける不朽の力を持つことが証明された。それは単に多国間主義のためのものではなく、インド太平洋に対する前向きなビジョンを共有する自由主義国家間のパートナーシップ構築への具体的な一歩だった。これは、1年前に悲劇的な死を遂げた安倍氏の永遠のレガシー(遺産)である。