トップオピニオン問題ある日本の警察制度 グローバル・イッシューズ総合研究所代表 吉川 圭一氏  【岸田首相暗殺未遂―有識者の視点 】

問題ある日本の警察制度 グローバル・イッシューズ総合研究所代表 吉川 圭一氏  【岸田首相暗殺未遂―有識者の視点 】

グローバル・イッシューズ総合研究所代表 吉川 圭一氏

筒状の物体が投げ込まれ、身をすくめる岸田文雄首相(中央)= 15日午前、和歌山市(目撃者提供)(一部画像処理しています)

2023年4月15日、岸田総理暗殺未遂事件が発生した。安倍元総理暗殺事件から1年も経(た)たないにもかかわらずである。また5月25日には長野県で猟銃を使った殺人事件が起こり4人が犠牲になった。日本の警察制度には何か問題点があるのではないか。それに関して考えてみたいと思う。

よしかわ・けいいち  1963年生まれ、筑波大学大学院修了。国会議員公設秘書等を経て、米ワシントンを拠点に一般社団法人日本安全保障・危機管理学会(JSSC)ワシントン事務所長として危機管理専門の省庁を立ち上げるという方向での政策提言活動を行う。2016年末にワシントン事務所を、いったん閉鎖。グローバル・イッシューズ総合研究所(GII)代表。著書に、『911から311へ―日本版国土安全保障省設立の提言』『日本はテロを阻止できるか?』(近代消防新書)ほか。

その問題点の最たるものは、警察の実動部隊が都道府県警に分かれていることではないかと思う。もう一つは官僚制の行き過ぎだろう。

安倍元総理暗殺事件の後に行われた再発防止策は、要人が赴く県の県警に警護計画を事前に警察庁に提出させ、それを警察庁が確認するというものだった。しかし安倍元総理暗殺事件の状況を見ても分かるように、日本の各県警は予算や人員が十分ではないのである。そこで最大の警察組織である警視庁にSPが置かれ、要人が赴く地方に同行する形になっている。しかしSPも数百人程度しかいないため、県警との協力が欠かせない。その県警が予算や人員が不足していることは先にも述べた。

その県警に警護計画を策定させ、それを警察庁とやりとりさせたりすると、かえって県警の時間と労力を割いてしまって、肝心の要人警護自体に支障を来さないか。岸田総理暗殺未遂も、そのような中から出てきたのではないか。

戦前日本の軍部や内務省に行き過ぎがあったことは否めない。そこで日本に民主警察を根付かせるには、都道府県単位に警察を分割するのはやむを得なかったかもしれない。

例えば中等教育が3年ごとに分断されている制度も、日本が貧しかった昭和20年代には合理的だったかもしれない。しかし高校全入がほぼ実現した昭和40年代には抜本的に見直すべきだったのではないか。いじめ、不登校、学力低下の原因は、そこにあると言ってよいだろう。

それへの対策のためか、最近の公立学校では、教員と教育委員会等の間で、やりとりする書類が大量に増え、それが教員の長時間労働の原因となり、多くの有意な若い教員が辞めていっているという。これでは本末転倒である。安倍元総理暗殺後の再発防止策と同様である。

私がワシントン赴任時代お世話になった米国緊急事態管理庁(FEMA)の官僚で、阪神大震災後に1年ほど日本政府に出向していた人物に言わせると、日本の官僚組織は無駄な書類仕事が多過ぎると言う。福島原発事故に関して取材してみても、東京電力は経済産業省との確認書類が多過ぎて、かえって原発のセキュリティーに割ける時間と労力を奪われていたようである。

このような日本独特の官僚主義の弊害を見直すこと。そして昭和20年代には適切だったかもしれないが、今となっては不適切になった制度も改革すること。それが重要だろう。昭和20年代の改革を主導した米国の責任に今となってはしてはならない。日本人の自己責任として引き受けるべきだろう。

具体的には要人警護だけではなく犯罪の捜査や予防が、これだけ広域性を帯びている今、国家警察の制度も考えてよいのではないか。連邦国家である米国でさえ、自治体の警察だけではなく、連邦捜査局(FBI)その他の国家警察的機能は存在する。要人警護を行うシークレット・サービスも全国組織である。

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